搭乗時の6割の作業効率しかない建機の遠隔操作に“5G”は何をもたらすか:令和元年度土木研究所講演会(3/3 ページ)
つくば中央研究所・有田幸司氏
土木研究所では、「5Gの具体的なユースケースの技術的効果を評価検証する。現場で現行の無線LANと比較して、どの程度迅速に利用環境の設営が可能かなど、導入メリットを調査していく」(有田氏)。
5Gの現場実装と同時に必要と有田氏が指摘するのが、ロボットを自律制御する技術の向上。高速大容量通信で、AIや高速処理技術の利用が現実のものとなれば、これまで自律制御化されていなかった動作やシステムも自律制御化されるようになる。研究所では、自動化レベルの定義を提起して、現在では統一的なものが無い運用ルールも含めた自律制御の共通イメージについて、内外で情報共有していく方針を示している。
講演のまとめで有田氏は、「災害発生時のロボット技術に適用可能な諸技術は、跛行(はこう)的にバラバラで進捗している。これからは遠隔操作と自律制御の両面から、互いに最良の組み合わせとなることを意識しつつ、市場性や運用性も考慮に入れた開発を継続していくことが不可欠だ」と展望を語った。
土木研究所の研究事例。東北大学と共同研究している外部カメラが不要となるドローンの活用
- 激甚化する水災害に対し、「締切工技術」と「3D浸水ハザードマップ」を研究開発
寒地土木研究所は、北海道開発の推進に資することを目的に設立された国内唯一の寒地土木技術に関する試験研究機関。最新の研究では、近年頻発する台風や豪雨などに伴う、水災害に対し、堤防決壊の早期対応と3D浸水ハザードマップによるハードとソフト両面から防災技術の開発を進めている。
- 建設重機に着脱可能な遠隔操作装置を開発、フジタ
フジタは、バックホウなどの建設重機を遠隔操作できる装置「ロボQS」を開発。汎用の油圧ショベルに現場で装着できる遠隔操作装置で、災害時の土砂崩れなど、人の立ち入りが危険視される現場で威力を発揮する。2018年7月18〜20日に東京ビッグサイトで開催されたメンテナンス・レジリエンスTOKYO 2018内の「i-Construction推進展2018」で、土工の建設現場をVR化して、実演デモを行った。
- 建機の遠隔操作、次なる躍進のカギは“5G”と“VR”
KDDIは、大林組およびNECと共同で実証をしている建設機械の遠隔操作に関して、「マイクロウェーブ展2017」で紹介を行った。5G(第5世代移動通信)とVR(仮想現実)で、さらなる建機遠隔操作の効率化を目指す。
- 無人化施工の品質劣化を補うカギは「事前検討とオペレータの情報量」にあり
現在、建設現場で採用されている無人化施工は、災害復旧以外の工種でも普及しつつあるものの、機種や台数に限りがあることや有人の機械施工に比べ施工品質が劣るなどの課題がある。技術開発を進める建設無人化施工協会では、解決のカギは作業計画を立案する際に重要となる事前の現場情報量とオペレータへの情報提供にあると見ている。
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