他にも重要な問題点があり、離れた場所からモニタリングする映像は、タイムラグのある過去の痕跡でしかなく、それをもとに現在・未来の危険やリスクを回避しなければならない。加えて、搭乗していれば体感できる機体の傾きや揺れ、振動、加速度が、遠隔では体感できず、建機にセットしたカメラやセンサー以上の情報は得られないという阻害要因もある。こうしたロボット建機を取り巻く課題のため、土木研究所の実験では、人が建機に乗った場合と比べて、作業効率は良くても、60%まで低下してしまったという。
課題のうち、映像の遅延時間について有田氏は、「公共ブロードバンドで1000ms(ミリセカンド)、小さい無線LANで700ms、伝送容量の大きい無線LANでやっと300msで、このレベルで辛うじて効率を落とせずに作業できる。遅延が生じるのは、映像をデータ変換するコーデックに時間を要するためで、時間を費やせば画質は上がるが遅れが生じる。“圧縮率と画質のトレードオフ”の壁を乗り越えるためには、1秒間に扱えるビット容量“ビットレート”をどれだけ確保できるかにかかっている」と解説する。
期待されるのが次世代通信規格の5Gで、2時間の映画であればわずか3秒でダウンロードできるほど超高速で、ロボットの精密な操作を誤差なくリアルタイムで通信することも実現する。しかし、有田氏は大手のキャリアが全国展開するものではなく、「建機の遠隔操作には、個別のニーズに応じて、地域企業や自治体が自前で免許を取得し、柔軟に5Gシステムを構築できるローカル5Gが有効だ」とする。ローカル5Gには、通信事業者による整備が進まないエリアや災害の被災現場でも、独自に5Gのネットワーク網を構築できる利点がある。
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