政府は2017年3月に、「水中観測業務規程」を改正し、河川流量の測定に、従来の着水タイプの流速計と浮子に加え、その他の計測機器を用いることを認めた。これを受けて、国立土木研究所は、離れた場所から対象河川の流速を測れる電波式流速計を横河電子機器と共同開発した。
国土交通省 関東地方整備局は2019年10月3〜4日、千葉県松戸市の建設技術展示館で、公共工事に関わる技術者の知識習得と技術の普及を図ることを目的とした「第9回 出展技術発表会」を開催した。
会期初日には、国立土木研究所 水工研究グループ 水上チーム 上席研究員の山本昌氏が遠距離から河川の流量を測れる電波式流速計について解説した。
河川の治水や利水計画に使用する流量は川の流速と断面積から算出される。これまで流速は、浮子(ふし)やプロペラを搭載した着水タイプの流速計で計測していた。この方法を用いた場合、流木などの漂流物による破損や内水・外水の氾濫(はんらん)時に作業員が退去命令により観測地点に赴けないといった壁があった。
こういった障壁の打破を目指して開発されたのが電波式流速計だ。国立土木研究所と横河電子機器が共同開発した機械で、川に電波を照射し、反射した電波の周波数から流速を導き出すドップラータイプの測定原理を応用している。
最大の特徴は、無人・自動観測に対応していることで、ゲリラ豪雨や急激な洪水のピーク時でも流速を測れる。橋梁(きょうりょう)や浮子投下装置がない場所でも河川の流速観測が行え、配置するエリアを選ばないため、予定側線(測定に必要な川に生じる波など)からの逸脱や橋脚後流の影響を受けない。測定時間が短いので、水位を測るテレメータとの連携にも応じる。同機を複数組み合わせることで、流向も調べられる。
国立土木研究所が電波式流速計の電波をどこまで発信できるかを調べた実証試験について、山本氏は、「関東地整管轄の河川で晴天時に実施した。現状で最も高精度と評される超音波流速計(ADCP)と比較した結果、電波を当てられる距離はADCPと同等の約300メートル。得られた流速の誤差は毎秒約0.1メートルとなった。ADCPとの差分が少ないため、現場でも力を発揮する」と説明。
現在は、「既に国土交通省の直轄事務所で、河川の調査などで運用されている。ドローンに取り付け、空中からの流速の測定する試みも検討している」と明かした。
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