愛知・名古屋に本社を置くベンチャー企業クラッソーネは、「豊かな暮らしで人々を笑顔に」をミッションに掲げ、“解体工事”に特化したB2C向けのマッチングサービスを展開している。 9期目となる2019年度は、ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達を行い、ITを建設分野に応用する技術革新「建設テック(CON-TECH)」を目指し、スマートフォンのLINE上でユーザーと解体工事会社をダイレクトにマッチングさせ、業界の多重下請け構造を解消する新サービスの準備を進めている。
2016年の建設業法改正で、29番目の建設業許可業種として加わった「解体工事業」。2019年5月末に経過措置期間が終了したことに伴い、2019年6月1日以降は許可を受けなければ、解体工事業を営むことができなくなった。
現在、解体工事業界では、高度成長期に乱立したビルや戸建て住宅の老朽化による建て替え需要をはじめ、建設業界全体で喫緊の課題となっている人手不足、地方だけでなく都市部でも広がりを見せる空き家問題、廃プラスチックを含めた廃棄物処理への対応など、取り巻く環境は急速に変わりつつある。
こうした状況の中、クラッソーネが運営している個人の施主と解体工事会社を結ぶマッチングサービス「くらそうね解体」が、2018年度の施工高で40億円に到達するなど著しい成長を遂げている。2019年8月には、次のステップとして、LINEと連携した新サービス「くらそうね」の提供を開始しており、業界が抱える構造的な問題の解消も見据えた新たな「建設テック(CON-TECH)」として注目を集めている。
なぜ解体工事にスポットを当てたマッチングサービスをはじめたのか?新サービスの概要やこれからの市場予測も含め、クラッソーネ代表取締役CEO・川口哲平氏にインタビューした。
――クラッソーネ起業の原点
川口CEO 出発点となったのは、京都大学農学部卒業後の2005年に入社したセキスイハイムで、全国1位の成績を残せた営業マンとしての経験。個人が9割を占めるクライアントと日々取引きしていくうちに、業界が抱える問題点に気付いた。
建設業界は売り切りが基本で、営業担当者は売ってしまえばそこで仕事は終わり。組織全体が売り上げや契約件数の追求だけを重視している。だが、施主にとっては、入居してからが始まりで、言うなればサブスクリプションのように、そこからローンを返していかなければならない。
ハウスメーカーでは通常、古い家を一度壊して新たに建てる場合は、つながりのある下請けの解体工事会社に発注する。多重下請け構造のため、末端の解体工事だけの純粋な費用ではなく、上乗せ上乗せとなり、結果として解体費用がかさんでしまう。これが負担となり、新築の内装工事費にまで十分な予算が割けず、やっと新築の家を建てても、施主の満足度は低いというケースが少なくなかった。
サービス業など他の業種の価値観で考えれば、家を建て替えると自動的に解体工事会社が決まってしまうのは不自然。建築主が言い値に従う必要はなく、古い家を解体することと、新しい家を建てることは切り離せるはずと思い至り、2011年に設立したクラッソーネでマッチングサービスとして具現化した。
――マッチングサービス「くらそうね解体」の誕生
川口CEO 当時を振り返ると、解体工事会社でHPを運営しているのは、感覚値でおよそ5%程度に過ぎなかったと思う。個人の施主が施工会社の存在そのものを知る術が無く、当然ながら、複数の会社から見積もりを照会することも不可能に近かったであろうことは容易に想像がつく。売り手のみが専門的な知識を保持し、買い手は何も知らない不均等な“情報の非対称性”にあった。
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