竹中工務店は、火災発生時にも、安全な区画のエレベーターを稼働させ、歩行困難者などの避難に使用できる火災時避難計画を立案し、沖縄県浦添市の大型ショッピングセンター「サンエー浦添西海岸 PARCO CITY」に初導入した。
竹中工務店は、国内初となるエレベーターを利用した火災時避難計画を立て、沖縄県浦添市の大型ショッピングセンター「サンエー浦添西海岸 PARCO CITY」に初導入した。
従来の昇降機火災管制制御は、火災発生時に建物内の全エレベーターが避難階で強制的に停まり、機能を停止する方法だったため、エレベーター停止後の避難は階段を用いるしかなく、歩行困難者は避難することができなかった。そこで、2019年6月にオープンしたサンエー浦添西海岸 PARCO CITYでは、事業者であるサンエーパルコとエレベーターメーカーの三菱電機と連携し、国内初の火災時におけるエレベーター避難利用を計画して整備した。
計画では、火災が発生した防火区画と、万一に備えてその隣接区画のエレベーターは停止するが、火災と関係のない区画は発電機から耐火ケーブルを伝って電源を供給し、エレベーターの稼働を続け、歩行困難者でも避難することが可能になる。火災が広がる場合は、随時、該当箇所のエレベーターを停止していく。また、防火区画ごとに消防活動拠点を設け、加圧給気による拠点の安全確保も行う。
サンエー浦添西海岸 PARCO CITYは、地上6階建て、延べ床面積が22万4021.71平方メートルの大規模商業施設。火災が発生しても影響を受けないエリアも広く存在するため、エレベーターを継続利用させることは避難計画の上で非常に有効となる。今回の火災時避難計画の導入により、高齢者や子供、体の不自由な人のスムーズな避難が実現し、全ての施設利用者が円滑に避難できる体制が構築された。
2013年10月に東京消防庁は、「高層建築物における歩行困難者等に係る避難安全対策」を発行し、高層建築物の非常用エレベーターに限り、火災時の避難利用を許可している。しかし建物の大多数を占める中・低層の乗用エレベーターについては、火災時の避難利用を実施した事例はないという。竹中工務店は、エレベーターの避難利用計画を全国の大規模な中・低層建物にも水平展開していき、社会的ニーズであるユニバーサルデザインにマッチした施設づくりに貢献していく方針を打ち出している。
サンエー浦添西海岸 PARCO CITYは、建築設計を国建、構造設計・設備設計を竹中工務店が担当し、施工は竹中工務店・國場組・大城組・大米建設から成るJVが手掛けた。工期は2017年7月〜2019年4月。
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