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» 2019年05月13日 10時11分 公開

新工法:クレーンの吊り荷が旋回するのを制御する「ジャイアン」、京成線高架橋工事に適用

戸田建設は、タワークレーンの揚重作業用に開発した吊り荷旋回制御装置「ジャイアン」を移動式クレーンによるプレキャスト床版の試験施工に適用し、営業線が近接する条件下での実用性および安全性を確認した。

[BUILT]

 戸田建設は、タワークレーンの揚重作業用に開発した吊(つ)り荷の旋回を制御する装置「ジャイアン」をラフタークレーン50トンによるプレキャスト床版の試験施工に適用し、営業線が近接する悪条件での実用性および安全性を確認した。同時に自動玉掛け具「エレビア」も併用して、吊り荷の玉掛け、玉外しにおける検証を行った。

営業線が近接する狭い現場で「ジャイアン」を活用

 吊り荷旋回制御装置は、内蔵するホイール(フライホイール)を高速回転させ、そのジャイロ効果で発生する高出力の旋回モーメントを吊り荷の旋回をコントロールする駆動力に用いている。新開発のジャイアンは、吊り荷が風などの外力を受けても、一定の姿勢を保つ受動制御と、吊り荷を作業者の意思通りに旋回させる能動制御の両方を兼ね備える。

 ジャイアンの名称は、「ジャイ(ジャイ)ロ機構で安(アン)全」に揚重作業ができることから命名され、揚重作業の安全性の向上と吊り荷の正確な位置への取り付けを実現する。これまで、タワークレーンでの施工実績はあったが、今回初めて移動式クレーンで活用した。

 一方、自動玉掛け具のエレビアは、フックで吊る作業を磁石で吊り具を引き寄せることで代替し、リリースは遠隔からリモコン操作で行う。

吊り荷旋回制御装置利用時の架設状況断面図 提供:戸田建設

 試験施工は、京成電鉄押上線(四ツ木駅〜青砥駅間)の連続立体交差事業のうち、工事起点となる「四ツ木」駅から745メートルを高架橋化する工区の一部で実施した。

 高架橋工事では仮線工法が採用されており、試験施工を行った仮下り線の仮高架橋区間は、営業線と仮高架橋工事桁との離隔が50センチしかなかった。反対側の敷地境界も、住宅密集地に隣接した狭小な施工ヤードという厳しい現場条件だった。

営業線の列車走行時の架設状況 提供:戸田建設

 試験施工の結果、移動式クレーンでの移動や旋回時における吊り荷の方向制御は安定したことが認めらえた。また、荷おろしを行う場合に、荷物を引き寄せるための“介錯ロープ”の作業が省略でき、効率的な人員配置と、近接条件下での安全性も確認された。

 近接する営業線での列車走行時には、吊り荷の静止状態を問題なく維持。列車の走行に支障を与えることもなく、安全に架設することが実現した。

 一方の自動玉掛け具は、作業員が近づく不要がないため、玉外しの作業を安全かつ効率的に行えたという。

 なお、吊り荷旋回制御装置と、自動玉掛け具を用いた場合のサイクルタイムは、従来の施工方法とほぼ同等なことが実証された。

 試験施工で用いたジャイアンは重量1.6トンの軽量化タイプで、旋回制御能力は75t/m2(トン毎平方メートル)、吊り荷のプレキャスト床版の最大重量は3.94トン、最大慣性モーメントは4.28t/m2。

吊り荷の旋回状況。左側は住宅密集地との敷地境界 提供:戸田建設
自動玉掛け具。左はフックの設置状況、右はリモコン操作 提供:戸田建設

 今回の試験施工を踏まえると、強風下での作業や吊り荷の旋回範囲が制限される現場などで、吊り荷の方向を安定させ、迅速かつ安全で確実な架設をすることに有効なことが判明した。高所の足場など危険を伴う場所でも、介錯ロープを持つ作業が省かれるため、作業者の安全確保にもつなげられる。

 土木向けの用途では、道路工事の側溝など敷地境界でプレキャスト部材を連続的に並べる作業、切梁(きりばり)や腹起しの支保工、埋設管などが輻輳(ふくそう)している立て坑内での吊り荷の吊り降ろしなどに、ジャイアンを導入することで、効率化が見込める。さらに道路の規制をかけている現場では、介錯ロープを持つ作業の省略と同時に、ガードマンの省人化にも期待できるとしている。

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