水不足を解消するワイズに戸田建設が出資、沿岸/山間部の土木工事で海や川から用水調達産業動向

戸田建設は、「海水淡水化装置」を製造販売するワイズグローバルビジョンに出資したことを明らかにした。

» 2019年04月15日 08時02分 公開
[BUILT]

 戸田建設は、「海水淡水化装置」を製造販売するワイズグローバルビジョン(以下、ワイズ)に第三者割当増資引受で出資し、小型海水淡水化装置による水不足を解消するCSV(Creating Shared Value/共通価値の創造)の実現を目指す。

低価格で海水・淡水を浄化する「海水淡水化装置」

海水淡水化装置「MYZ E-40」フレームタイプ 出典:ワイズグローバルビジョン

 水不足の解消は、世界的な社会課題として、SDGsの目標の一つに掲げられている。ワイズでは、高価な大型機ではなく、途上国でも導入が容易な小型装置に着目して、この課題の解消に取り組んでいる。今回の提携では、そうしたワイズの水事業の方針が、「企業活動を通じて社会の発展に貢献する」という戸田建設の企業理念に合致したことから、出資に至った。

 戸田建設では、海水淡水化装置をの用途範囲を拡大することで、近隣の海や河川から工事用水を調達することが可能となり、主に沿岸/山間部の土木工事で、運搬コストの削減が見込める。現在は既に、戸田建設の作業所で試行を行っているという。

 ワイズは、水のスモールインフラとして世界最小最軽量クラスの装置「MYZ E-40」を開発。MYZ E-40は用途に応じたスーツケース(幅660×高さ310×奥行き500ミリ)、またはフレームタイプ(幅660×高さ310×奥行き500ミリ)が用意されている。浄水量は海水で毎時35〜40リットル、淡水で毎時70〜80リットル。10時間連続で運転が可能だ。

 海水、汚水から浄水を造るこの装置は、逆浸透膜、ポンプ、モーターなどの信頼性の高い汎用品に独自開発したパーツ(特許取得済)を組み込むことで、高品質と低価格を両立させている。

最小クラス製品仕様(大型機も開発) 出典:戸田建設

 浄水の一連の流れは、取水ポンプで海水を吸い上げ、1次フィルター(5ミクロン)を通過。続いてろ過する2次フィルター(0.5ミクロン)を通し、高圧ポンプでハウジング(逆浸透膜)に海水を注入し、逆浸透膜(RO膜)に流す。圧力バルブを締め、ハウジング内の圧力を上げ、既定の圧力に達すると真水が造水。排水は既定の圧力を超えると、安全弁が作動してリリースされる仕組み。

海水淡水化装置フローチャート 出典:戸田建設

 今後両社は、特に良質な水資源の確保が重要な課題となっている海外にターゲットを定め、海水淡水化装置により、経済的かつ社会課題の解決に資する取り組みを継続していく。

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