大成建設は、建物を供用しながら、改修・解体工事を実施する際に、騒音を事前に予測するシステム「TSounds-Structure」を開発した。中規模ビルでこれまで1日かかっていた計算時間が、わずか1分で高精度な結果が得られる。
大成建設は、建物を使用しながら改修・解体工事を実施する際、発生源から建物内を伝わり、居室などに影響を及ぼす騒音を事前に予測するシステム「TSounds-Structure」を開発した。TSounds-Structureは、工事前にどの程度の騒音が発生し、どのように伝わるかが高精度かつ迅速に予測でき、施工時に効果的な騒音対策が実現する。
近年は、建物の一部を通常業務で使用しながら、改修・解体工事を同時に実施するケースが増えている。その場合は、工事の振動が建物部材を伝わって、居室の壁を揺らすことで発生する“固体伝搬音”を、的確に把握し、対策を講じる必要がある。
固体伝搬音の振動伝搬解析には、伝搬距離をパラメータとする実験式を用いるが、計算が容易な反面、振動波の反射など、波動現象には対応できないため、予測精度に欠点があった。一方で、波動現象に応じ、精度を向上させた解析手法も提案はされているが、建物全体の解析には計算時間がかかり、実用レベルには達していない。
大成建設が開発したSounds-Structureであれば、振動伝搬解析に統計的エネルギー解析法を用い、振動波の性状や部材間の反射/透過などの波動現象を考慮した解析が実行でき、実測値と同等の結果が得られるという。
従来の高精度解析手法である有限要素法などと比べ、TSounds-Structureは解析に必要な要素数が少なくて済むため、中規模ビル(延床面積1000坪以上、3000坪未満)の場合、これまで1日以上かかっていた計算時間が、1分ほどまでに短縮され、迅速な解析が可能となる。
さらに、実際の騒音対策の検討では、固体伝搬音だけでなく、大気中を伝搬する空気伝搬音の影響も考慮しなければならない。これまでは、それぞれの伝搬音を個別に解析する手法しかなく、両方の影響を一体で解析する手法はなかった。
新システムは、開発済みの空気伝搬音予測システム「TSounds-Ambience」と連携し、固体伝搬音と空気伝搬音の影響を組み合わせた総合的な騒音予測が可能となる。さらに、解析結果を3次元モデルで可視化することで、対策の範囲や内容を視覚的に理解することにつながる。
大成建設では今後、建物外から生じる固体伝搬音予測にも対応させるため、改良を加えるとともに、改修・解体工事における騒音対策のための予測ツールとして、騒音影響の少ない施工計画の提案に活用していくという。
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