具体的な施工方法はまず、坑口部で2リングごとに1セットでPCa覆工を組み立て、レール上を通って坑内奥へと設置していく。PC鋼棒でトンネル軸方向に接合していき、一定区間ごとにPCa覆工背面に裏込め注入する。この作業を繰り返して覆工コンクリートを完成させる。
なお、DIIIパターンでは、インバートコンクリートと覆工コンクリートを鉄筋で定着させる必要があるが、従来の現場打ちではインバートコンクリートから下から上に鉄筋が突出していたため、PCa覆工が運搬できなかった。そこで今回、PCa覆工側に鉄筋を収納しておき、設置個所でインバートコンクリート側に落とし込む逆転の発想を考案している。
PCa化した新工法では、組み立て、運搬、設置時にも坑口部、坑内に重機やダンプトラックが通行する空間を確保でき、切羽作業と同時に行うことも実現する。また、PCa覆工を運搬するローラーは、レールの基盤となるインバートコンクリートに切欠き部を設置することで回収できるようにし、コストダウンを図った。
PCa化が実用化すれば現場打ちに比べ、施工速度が1.5倍に早まり、経験則に基づく施工でなくなるため、熟練工も不可欠ではなくなる。施工品質も、均質で緻密なコンクリートが打設できるため、現場打ちで課題だった天端部の施工不良が回避されるなど、耐久性が確保できる。
覆工コンクリートの薄肉化により、掘削土量やコンクリート使用量が少なくなるため、トンネル工事に伴い発生する二酸化炭素の排出量を削減。坑内におけるコンクリート打設数量が減ることで、トラックアジテータの坑内走行やコンクリートポンプ車の稼働が低減され、排気ガスや粉じん発生が抑制されるという副次的なメリットにも期待が持てる。
コスト面でも、トンネル施工費は現場打ちと比較すると、割高となるが、品質向上により供用時の維持管理頻度が少なくなるため、長期的な観点でみれば、ライフサイクルコストの低減につながるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.