戸田建設、西松建設、ジオスターの3社は、覆工コンクリートのプレキャスト化に向けて試験を行った。模擬覆工を用いた組み立て、運搬、設置の一連の工程を行って有効性を検証した。PCa覆工は現場打ちに比べて施工速度が1.5倍程度早くなる他、安全性や品質の向上にもつながる。
戸田建設、西松建設、ジオスターの3社は、覆工コンクリートのプレキャスト(PCa)化に向けて試験を行った。試験では、模擬覆工を用いた組み立て、運搬、設置の一連の工程を行って、施工方法の妥当性を検証。PCa覆工は現場打ちに比べ、施工速度が1.5倍程度早められ、安全性や品質が向上することなどを確認した。同技術は特に、山岳トンネルの工事で有用性が高く、作業環境、生産性も向上させるなど、多くの点でメリットを見いだせるという。
山岳トンネルの覆工コンクリート工事は、吹付けコンクリートと、覆工コンクリートの打設に使うアーチ形の特殊型枠である“セントル”との間の狭い空間にコンクリートを打ち込む作業。従来は、吹上げ方式で天端部が打設されており、そのため施工状況が視認できず、巻厚不足や締固め不足が懸念されてきた。また、打継部ではセントルが若材齢コンクリートへ押し付けられた際には、ひび割れが起こるなど、品質確保の面でも課題があった。
作業環境の面でも、セントル内部は作業スペースが確保しにくく、セントル面板のケレンや剥離剤塗布、コンクリート打ち込み時の配管切り替え、棒状バイブレータを用いた締固めなどは、作業員にとって負担となっていた。
こうした課題に対し、3社は、狭い環境下での作業をなくし、作業環境と品質、生産性を高めるべく、覆工コンクリートのPCa化の検討を始めた。検討では、1.覆工コンクリートの仕様・形状を改良し、施工性と可搬性を改善。さらに、2.最適な施工方法を考案し、切羽作業も同時進行できる空間を確保することも検証した。
1の仕様・形状の改良では、覆工コンクリート部材の厚さを170〜230mm(ミリ)に薄肉化した。これまで経験工学的に300mmに設定されてきたものと同等の部材性能を保持している。仕様は、鉄筋コンクリート構造とし、厚さをMN破壊包絡線(軸力と曲げモーメントを受ける断面の終局耐力を表したもの)から求めた。地山等級でCIIやDI断面などの無筋区間は170mm、DIII断面などの有筋区間は230mmの厚さにそれぞれ設定している。
搬送を考慮して形状も工夫し、製造場所から直接運び出せるようにPCa覆工は3分割を基本形状とした。さらに、脚部はトンネル内での移動の安定性と設置後の構造的な安定性を両立させるため、2面構造を採用。1面は水平方向へのローラーを設置し、坑内移動を容易にする。もう1面は、ローラー除去後にレールを水平設置するための基礎コンクリートであるインバートコンクリートを接続し、現場打ちと同様にトンネル中心を向くように角度を付けた。
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