NEXCO中日本は、これまで人の目視点検では危険性があったり、物理的に不可能だったりした高道路の橋梁下面などの点検方法として、無線と有線のドローンを導入した点検方法を提案している。無線は可動範囲の自由度が高く、有線は通信環境が悪い場所でのインフラ点検にそれぞれ対応する。
NEXCO中日本グループで、高速道路の保全・点検業務を行っている中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋と中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京は、2018年4月18日〜20日に幕張メッセで開催された「第4回国際ドローン展」で、ドローンによるインフラ点検サービスを披露した。
同社が提案するドローン点検は「診(み)るコプター」と「構造物点検調査ヘリシステム SCIMUS」の2タイプ。診るコプターは、ドローンメーカーと組んでチューニングした特注の無線ラジコンヘリ(UAV)を採用。検査路が無い点検困難な場所や橋梁(きょうりょう)の桁間・対傾構などの人が入りづらい箇所、作業車でも届かない高所への対応に加え、遠方からでも目視ができない部分の点検・調査を行う目的で開発された。災害時には、斜面の法面崩落などで立ち入りができなくなったエリアで、緊急時の情報収集や状況判断に役立てることもできる。
もう1つの構造物点検調査ヘリシステムは、有線のマルチコプターを使った構造物点検システム。導入するドローンは無線ではなく、点検者が機体の位置を確認するカメラ用と、電源、コントローラーのケーブルを介した有線で行う。機体の操作は、ドローンが飛んでいる場所を把握するカメラ映像と、ドローン搭載の高解像度カメラで写す映像が同時に見れるマルチ画面の俯瞰(ふかん)モニターで確認しながら行う。
有線ドローンのメリットは、ケーブルで常時電力が供給されるため、長時間での飛行が可能。無線ドローンの様に、障害物で電波が遮断され、不安定なコントロールに陥る心配もない。懸垂治具を用いれば、通常であれば人が登れない高架橋の壁高欄や遮音壁を超えて吊り下げられ、その橋の下面も点検できる。また、障害物のある場所やGPS環境が無く、通信環境が貧弱な山間部など、電波が途絶して操縦不能になる恐れのある場所でのインフラ点検にも対処する。
事業開発担当の責任者は、「将来はドローンに座標を持たせたい。座標があれば橋梁図面に照らし合わせ、どこに不具合があったか具体的に示すことが簡単にできるようになる。ドローンによる橋梁点検は、現実には法的な壁に阻まれ、国が認可する段階には至っておらず、民間レベルでの活用にとどまっている。しかし、人による高所の点検は、安全性へのリスクやコスト面、昨今言われる人手不足といった諸問題が取り巻いており、今後はドローンによるインフラ点検が一般的に普及することを期待したい」とコメントした。
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