ARで工事の完成イメージを事前共有、2週間の検討期間が3日に情報化施工(1/2 ページ)

大林組が、タブレット端末上からリニューアル工事の完成イメージを確認できるAR(拡張現実)アプリ「FutureShot」を開発した。BIMモデルとの連携も可能で、設計段階における顧客ニーズの把握や、施工管理の効率化に活用していく狙いだ。

» 2017年04月04日 06時00分 公開
[陰山遼将BUILT]

 大林組はリニューアル工事の完成イメージなどをタブレット端末上で確認できる、AR(拡張現実)技術を使ったアプリケーション「FutureShot」を開発した。事前にタブレット端末で完成後のイメージを確認できるようにすることで、顧客のニーズの把握や施工管理の効率化に生かす方針だ。

ARアプリケーション「FutureShot」のイメージ(クリックで拡大) 出典:大林組

 リニューアル工事では、改修する部分や新設する部材の形、色、見栄えなどを、顧客の要望やイメージ通りに完成させることが重要になる。だが、工事の種別によっては部材の配置によってユーザーに与える印象が大きく変化する。例えば、耐震補強工事ではブレースなどの耐震補強部材を、どこにどのように設置するかによって、視界や動線、印象などが大きく変化する。こうしたリニューアル工事の完成度を高めるために、設計段階で顧客のニーズを正確に把握し、事前に完成イメージを共有できれば大きなメリットがある。

FutureShotで作成した耐震壁の設置シミュレーション。一番左がアプリでの加工前の写真。右2枚はアプリで耐震壁のモデルを重ね合わせたもの 出典:大林組

 また、工事中の仮囲いや仮設足場の設置状況など、施工中の安全対策などについても顧客との事前のイメージ共有は役立つ。従来は設計者や施工者が現地で撮影した写真を持ち帰り、新設する部材や工事用仮設資材のパースを重ねたイメージを作成していたが、顧客のイメージに合わない場合には後日、同様の作業を繰り返すこととなり、顧客との合意形成に時間がかかっていた。

 今回大林組が開発したFutureShotは、AR技術によりタブレット端末上で、工事の完成イメージなどを実際の現場映像に重ね合わせて表示させることができる。作成図面上にサイズやデザインの調整が可能な部材の3次元モデルを配置し、現地の映像とその場で重ね合わせる仕組みだ。

 部材のモデルについては、位置、角度、大きさに加え材質なども自由に変更できる。材質は、あらかじめ登録している壁紙やコンクリートなどのイメージの他、タブレット端末のカメラで撮影した現地の材質などもイメージとして追加できる。

 大林組は、実際の耐震補強工事に開発したARアプリを試験導入したところ、従来は約2週間かかっていた設計段階の初期検討の時間を、約3日間に短縮することができたという。

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