評価を下す技術者の経験や知識には依存しなくなったものの、カメラの性能や撮影状況の違いを吸収しにくく、あいまいな状況に評価を下すことができなかったということだ。
転機は2016年に訪れた。「2016年秋にディープラーニング技術を取り入れた後は、コンクリート診断士の点数と自動評価の結果がよくマッチするようになった(図9)」(科学情報システムズ ソリューション本部ソリューションシステム部で部長を務める武田祐二氏)。
当初、気泡だと誤認識していたPコン穴も自動判定できるようになったという*4)。
*4) 多数の表面画像を撮影、評価する際には作業手順に注意が必要なのだという。「ディープラーニングで学習させる段階では、撮影画像だけを集めて、後ほど一括評価することは難しい。自ら撮影してその場で評価する必要がある。なぜなら、気泡の実際のサイズを確認できるのは、現場だけだからだ。写真から気泡サイズを把握することは困難だ」(佐原氏)。
武田氏によれば、ディープラーニング技術を今回のような用途に使った例はほぼないのだという。「動物の写真を自動判定するような課題では、個人でも写真データさえあれば、学習を重ねて正確な判定ができるようにできる。今回の開発ではコンクリート診断士の判断が必要であり、これが一般のディープラーニングとの大きな違いだ」(同氏)。コンクリート診断士の地位を低下させるものではなく、持てる力を最大限に発揮させる技術だといえるだろう。
コンクリート表層品質評価システムには、発展の余地が大きい。現段階ではコンクリート表面の気泡のみを対象としている。今後は沈みひび割れや打ち重ね線、型枠継ぎ目の砂すじ、面的な砂すじについても評価システムを順次開発していく。
CIM(Construction Information Modeling)との連携や、自動施工のための制御処理にも生かしたいとした(図10)。
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