日本国土開発と科学情報システムズは「コンクリート表層品質評価システム」を開発した。表面気泡の状況を自動的に判定して施工品質の改善につなげる。ディープラーニング技術を用いることで、従来の画像処理では到達できなかった精度に達した。
「コンクリート表面の仕上がり具合、例えば気泡の量や深さによって、ガスや水の浸透度合いが変わり、長期間のうちにひび割れや剥離などが起こる場合がある。施工直後のコンクリート表面を適切に評価できれば、施工手法へフィードバックし、改善しやすい*1)」(日本国土開発でコンクリート研究室の室長を務める佐原晴也氏)。
日本国土開発と科学情報システムズは2017年3月3日、共同で「コンクリート表層品質評価システム」を開発したと発表。タブレット端末などを用いて表面を撮影するだけで、自動評価が可能になる技術だ(図1)。
*1) 例えばバイブレーターによる締め固めが不十分な場合、品質に影響を与えるような気泡が残ってしまう。
コンクリート診断士が現場で目視判定した評価結果と写真の対を数千件記録した後、ディープラーニング技術を用いて自動評価の正確性を高めたことが特徴だ*2)。
技術開発の狙いは2つある。1つは冒頭のコメントにあるように施工品質の改善だ。「1社だけの取り組みでは品質評価技術の可能性が広がらない。大量の施工データが必要だからだ。他社と共同してさまざまな仕上がり結果を評価していき、国の標準化項目作りに役立つことができればと考えている」(同社土木事業本部技術部で技術設計グループの課長を務める佐野健彦氏)*3)。
もう1つは経験の浅い技術者の育成に役立てること。自らの評価とより経験を積んだ技術者の評価を即座に比較できるため、技能の底上げに役立つ。
*2) ディープラーニング技術を適用する際、米Amazon.comのクラウドサービスであるAWSを用いた。
*3) 国土交通省が推進する「i-Construction」には、トップランナー施策の推進として、「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)」という項目がある。
両社が2年前に技術開発を始めたきっかけは、国の取り組みに刺激を受けたこと(図2)。国土交通省東北地方整備局は、コンクリート表面の出来栄えを定量的に評価することで、品質の向上を狙う取り組みを続けてきた。
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