2011年の東日本大震災で大きな影響が出たことから、物流を支える倉庫の地震対策需要が拡大している。大成建設は自動ラック倉庫向けに、こうした地震対策を行う際の事前解析時間とコストを大幅に削減できるシステムを開発した。顧客側の導入障壁を下げ、さまざまな業界の物流倉庫の地震対策の提案に活用する。
大成建設は、自動ラック倉庫の地震応答解析を短時間で処理・分析する解析評価システム「TASSラック シミュレーター」を開発した。地震対策を実施する上で課題となっている、地震応答解析の時間とコストを大幅に削減できるという。
2011年の東日本大震災では、工場や物流施設の自動ラック倉庫に格納した荷物のずれや落下が発生し、保管・出荷作業が長期間にわたり停止し、サプライチェーンが滞ることによる被害が多発した。そのため、自動ラック倉庫の地震対策が大きな課題となっている。
大成建設は自動ラック倉庫向けの地震対策技術として、2012年に自動ラック倉庫に適用する制震装置「TASSラック 制震」を開発し、医薬品・食品メーカーなどを中心に導入実績がある。こうした制震装置導入の初期検討では、地盤条件、ラック規模や荷物諸条件などを設定し、想定地震に応じた地震応答解析を行い、その結果を評価・分析の上、最適な制震装置仕様・台数を設定する。しかし、一連の地震応答解析に時間とコストが掛かるという点が、新規ユーザーにとって導入検討の障壁となっていた。
新たに開発した「TASSラック シミュレーター」は、こうした制震装置導入における初期検討の効率化とコスト低減を目的に開発したものだ。解析における諸条件、解析結果の分析・評価、制震装置の仕様・台数など設定機能の追加および解析結果の図化や報告書作成などの自動化機能を整備し、独自開発の3次元動的耐震解析プログラム「TDAP III」を用いることで、地震応答解析や初期検討に費やす時間を従来比5分の1程度に短縮した。また、コストも従来に比べて10分の1程度に抑えられるという。
新設、既設を問わず、標準的な構造部材を用いた多くの自動ラック倉庫に適用可能だ。荷物の配置の偏在状況や複数の荷重条件を設定することも可能で、より実際の運用に則した解析を行うことができる。この他、制震装置導入の効果を事前に検証したり、既存自動ラック倉庫の地震被害を予測したりする機能も備える。
大成建設では今後も需要拡大が見込まれる医薬品や食品など、さまざまな業界の物流倉庫の地震対策の提案に活用し、自動ラック倉庫向け地震対策技術の適用範囲を広げていく方針だ。
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