こうしたビルにおけるエネルギーの無駄はどこから生まれるのだろうか。トリコア氏はこうした点について「建築物だけの観点で考えて、人を見ないことが問題だ」と指摘する。
ビルでは、人が実際に利用していない環境でも、空調がかかっていたり、照明が点灯していたりする。また、人がいる場合でも場所によって寒かったり、暑かったり、作業内容には照明が明るすぎたり、暗すぎたりするような場合が生まれる。従来はこうした一人一人の環境や状況を把握する手段がなく、一方、これらのビル制御そのものも、個々の環境に合わせるような機能を持っていなかった。しかし、IoTを活用することでこれらの状況が抜本的に改善できる可能性が生まれてきたというわけである。
トリコワ氏は「ビルと人をつなげていくことが重要である。IoTにより人の環境情報を取得し最適に自動制御していくことで、空調や照明などで従来存在した無駄な消費を抑えることができるようになる」と強調する。
シュナイダーエレクトリックではこれらの取り組みを実際に、本社ビルで実践し、エネルギー消費量を4分の1に削減することに成功したという。BEMSを導入しさらにこれにIoTを含めたモニタリングや自動制御を加えることで、大幅な電力消費量の削減を実現している(図2)。さらに同様の取り組みを行った拠点では30〜75%の電力量削減を実現できたとしている。
トリコワ氏は「ビルの省エネ化への取り組みは難しい面もあるが最も重要なのは『意識付け』である。ビルをライフサイクルで考えていけば、省エネ化の重要性はすぐに理解できるはずだ。さらに省エネ化の素晴らしい点は、コスト削減としてすぐに見返りを得られる点だ。エネルギー環境の改善を考えるのであれば、発電よりも節電の方が簡単に大きな効果が得られる。こうした理解を広げていく必要がある」と述べている。
さらに、IoTを活用する意義として「ビルの環境が常にセンシングできるようになると、どこに人がいるのかという点やビルの入居率などの運営情報もいつでも把握できるようになる。こうした情報を分析することで新たな付加価値を生み出すことも可能となる」とトリコワ氏は新たな価値を訴えている(図3)。
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