日本HPは、建設業界向けクラウドプラットフォーム「HP Build Workspace 日本語版」の提供を開始した。紙図面とデジタル図面を一元管理し、QRコードによる最新版確認やAIによる図面ベクター化で現場の分断を解消する。クラウドサービスの展開に併せて、多機能な新型プリンタ「HP DesignJet」シリーズの新機種も上市した。
日本HPは、建築/エンジニアリング/建設(AEC)業界向け大判プリンタ「HP DesignJet」シリーズを活用したクラウド型のプロジェクト管理Webサービス「HP Build Workspace(エイチピー ビルド ワークスペース) 日本語版」の提供を2026年9月2日に開始した。
設計オフィスで更新するデジタルデータと、建設現場で使われ続ける紙図面を一元管理し、双方向でリアルタイムに一貫した情報を共有する。2025年10月に米国などで先行発表していたソリューションで、今回新たに日本市場へ本格導入する。
リリース同日に東京都港区で開催した説明会で、大判プリンタ事業本部 本部長の沼田綾子氏は、日本国内のA2サイズ以上を出力できる大判プリンタ(Large format printing:LFP)市場の現況について解説した。国内で稼働する大判プリンタの印刷用途のうち、ポスター用が約4割なのに対し、建築や建設、製造のCAD図面印刷が約6割を占める。さらに、その図面用途市場でHPが約50%のトップシェアを誇る。その背景には、日本HPは1970年に現在の業界標準となっている図面記述言語「HP-GL」を開発するなど、半世紀にわたり図面データを正確に扱う技術のDNAを培ってきた実績がある。
沼田氏は「設計やオフィスの現場ではCADやBIMの活用が進み、クラウドでの共有も今や当たり前になった。しかし、施工現場で参照しているのは、依然として紙やPDFの図面が中心だ」と指摘する。
建設プロジェクトには設計事務所、ゼネコン、専門工事会社、設備会社など多種多様なステークホルダーが携わり、図面の更新や設計変更の頻度も高まっている。そのため、「どれが最新版なのか、何が変わったのかを関係者間で正しく共有し続けることは想像以上に難しい」と、オフィスと現場で情報の分断が課題となっている現状を語った。
しかし、HPは「現場から紙をなくす」というアプローチを採らない。沼田氏は、現場で紙図面が残り続ける合理的な理由として、A1やA0といった大判用紙は一覧性が高く、全体像と詳細を同時に見比べながら、複数人でスムーズに合意形成を図れる点を挙げる。さらに、現場の納まりや変更点、注意事項をその場で直接メモとして書き込める即時性もある。
また、元請けや協力会社、職人、設備業者といった多岐にわたる関係者が、同じ図面を基準に認識を擦り合わせるための共通言語としても機能する。承認図や施工図、検査記録など、監査対応を含む品質や記録管理の場面では、物理的な記録として残す必要性があることも紙の図面が残る重要な要因となっている。
沼田氏は「課題は紙図面そのものではなく、デジタルと紙の間の情報同期にある。図面データのバージョンが更新されても、現場が古い紙図面を使い続けていれば、施工ミスや手戻りによる工期遅延、コスト増大を引き起こす原因となる。紙の良さをそのまま生かしながら、いかに最新の情報を現場へ届け続けるかが重要となる」と強調した。
事業本部 カテゴリーマネージャー 手島彩衣氏は、「建設の仕事では、同じ建物でPDFや紙図面、CAD、現場写真など多様な情報が存在する。大切なのは情報を別々に扱うのではなく、プロジェクトに関わる全員が同じ情報を見ながら仕事を進められるかだ」と述べ、プラットフォームが備える4つの主要機能を解説した。
今回の目玉となるAIによる図面データ化の機能は、「HP AI ベクタライゼーション」の名称で、CADデータが存在せず、紙図面のスキャンデータやラスターPDFしか残っていない過去物件や改修工事で、AIが手動のトレース作業を自動化する。HP独自の図面特化型AIエンジンが、ドア、窓、テキスト、破線、寸法線などの建築要素を識別し、レイヤーに自動分割したCADソフトウェアで編集可能なDXFデータへと一瞬で変換。古く劣化した図面のノイズや折り目の影を自動除去し、見やすく整える。
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