ILLUMMEは、当初から教育現場での利用を想定して開発されたわけではない。もともとはパナソニックEWが主戦場とするプロ向けの照明として、商品化を模索していた。「最初は、プロが使う照明をターゲットに開発を進めていた。ただ、なかなか出口が見つからなかった」と植田氏は振り返った。転機となったのが、米子工業高等専門学校(米子高専)の田中博美氏との出会いだった。
両者の接点が生まれたのは2019年。パナソニックEWの社員と田中氏が、同時期に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で研究留学していたことで知り合い、ILLUMMEにつながる試作品を見せたことがきっかけだ。田中氏は当時、プログラミング教育に取り組む中で行き詰まりも感じていたが、試作品を見て、「表現の幅が広い。こんなデバイスがあるのか」と感銘を受けたと語った。
その後、2020年から共同でプロジェクトに着手し、2020年12月には米子高専でILLUMMEを使った最初の授業を開講した。
それまで高専や大学工学部のプログラミング教育では、ロボットの制御やゲーム制作など、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)を軸とする「STEM教育」が中心だった。しかし、こうした授業に興味を示さない学生もおり、田中氏によれば、特に女子学生はその傾向が強かった。そこで、STEMに芸術やリベラルアーツの「Art」を加え、ILLUMMEを用いプログラミングとアートを組み合わせた光の表現を授業に取り入れた。
高専がこれまで得意としてきた研究型や課題解決型の教育に対し、田中氏がILLUMMEに見いだしたのは「正解のない」アート型の学びだった。田中氏は「高専の得意分野は研究型か課題解決型だが、正解のないアート型については方法論を持っていなかった」と話した。
ILLUMMEを使った授業は、あらかじめ正解が決まった課題を解くのではなく、学生自身の感性を起点に表現を考えることだ。田中氏は「これまでのプログラミングの授業と違って、感性を基軸としてアイデアを出せる。誰でも自由に発言できる授業になった」と成果を語った。普段の授業では学習意欲が低い学生も夢中になって取り組む姿が見られたという。
授業では、まずILLUMMEによる光の制御方法を学び、その後、抽象的な言葉からイメージを膨らませる「感覚ストレッチ」に加え、抽象画の対話型鑑賞を通して自由な発想を引き出すプロセスを経て制作に入る。抽象的な言葉に物語を与え、それを光の色や動きとして表現するなど、プログラミングを創作の“手段”として利用する。
光を表現手段にすることで、美術や数学を組み合わせた作品制作だけでなく、物語や俳句に描かれた心情を光で表現する国語との連携、地域文化を光で演出する試みも実施した。タイの高専では、地域文化をテーマにすることで、学生それぞれのバックグラウンドが垣間見えるような作品が生まれたという。
田中氏は「ドローンやロボットは、決まったルートをいかに走らせるかがプログラミングのメインターゲットになる。ILLUMMEは、そもそも表現するもの自体を自分で決められる。正解がないので自由度が高く、創造的な要素も入ってくる」と評価する。
受講学生45人へのアンケートでは、プログラミングへの関心が「強くなった」「少し強くなった」とする回答の合計が100%となり、学校での学びに対する意欲についても同様に「100%上がった」と回答。田中氏は特に「女子学生たちがプログラミングの授業をこんなに楽しそうにやっているのを見たことがなかった」と感想を漏らした。
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