熊谷組は、アーティキュレートダンプトラックの自動運転/遠隔操作システムを、実機を使わずPC上で検証できる建機自動化検証プラットフォームを開発した。自動走行制御ロジックや安全機能の検証をデスク上で完結させ、従来約1カ月かかっていた開発サイクルを1週間に短縮する。
熊谷組は2026年9月1日、アーティキュレートダンプトラック(ADT)の自動運転/遠隔操作システムを、実機を使わずにデスク上のPCのシミュレーション環境だけで検証できる「建機自動化検証プラットフォーム(ADTシミュレーター)」を開発したと発表した。
建設業界では、人手不足への対応や省人化/省力化に向け、建機の自動運転や遠隔操作の導入が進められている。土砂運搬などに使用するADTは、車体の中央関節を折り曲げて旋回する構造上、一般的な車両と比べて走行軌跡や車体姿勢の制御ロジックが複雑となる。わずかなパラメータ調整でも、速度や進入角度などの条件を変えた膨大なパターンを繰り返し検証する必要があり、実機を使ったテストは開発負荷の増大と開発スピード低下の要因となっていた。
熊谷組が開発したADTシミュレーターは、実際の建機を稼働させることなく、アーティキュレートダンプ特有の車体中央が折れ曲がる複雑な関節挙動や操作信号、GNSS位置情報をPC上で高度にシミュレートする。実際の建機から取得した動作ログ(実測値)を基に、車体の物理挙動や応答特性を独自に一般化(モデル化)した「挙動予測モデル」を搭載。操舵や速度に応じて「建機がどのように屈折/追従するか」を緻密に計算する。接続された自動運転プログラム側に「本物の建機が現場を走っている」と認識させ、実機を1台も動かすことなく、デスク上のPC内で自動走行制御ロジックや安全機能のデバッグ、検証を完結させる。
予測モデルから算出した車体の位置情報に基づき、実際のGNSS受信機が出力する標準フォーマット(NMEAデータ)もシミュレーター内で生成、送信する。走行ルートや車体の屈折姿勢、脱線距離などを画面上で確認できる機能に加え、プログラムによる自動テストや大量データ解析にも対応する。
また、1台のPC上で最大5台の仮想車両データや通信ポートを独立して管理できる。複数台の自動運転建機がすれ違ったり、協調して作業したりする場合を想定した複雑な運用ロジックの検証にも活用できる。
熊谷組によると、従来は制御プログラムの修正から現場での再検証完了まで約1カ月を要していたが、シミュレーターの活用により、開発サイクルを1週間に短縮できるという。また、PC上で検証することで、数千万円〜数億円規模の建機の稼働や燃料消費、試走に伴う現場での事故リスクを抑えられ、コスト削減と安全性/環境性の向上(CO2排出削減)に寄与する。
PC上で全自動テストを実行できるため、屋外での実機テストと異なり、GNSSの受信環境や天候に左右されず、24時間いつでも安定した検証が可能としている。
熊谷組は今後、対応車種のラインアップ拡充を進めるとともに、AIを活用した自律走行/障害物回避アルゴリズムとの連携強化を図る。さらに、複数台の建機が協調して稼働する施工プロセスの完全デジタル検証基盤として機能を拡張し、建設現場の省人化と施工DXにつなげるとしている。
AI:熟練建機オペレーターの技能をAIで可視化/継承、訓練基盤「メタトレ+」開発へ
第8回 国際 建設・測量展:インフラDX大賞受賞の地方建設業でもできる「遠隔施工」、奈良のゼネコンが独自装置とStarlinkで実現
i-Construction 2.0:フィジカルAIで建機自動化、人型ロボで操縦 安藤ハザマと神戸高専が共同研究
CIM:TREND-COREが2025年12月にアップデート、足場や山留の3Dモデル作成が可能に
i-Construction 2.0:ダム本体建設工事で複数の自動運転建設機械を協調運転、大成建設が実証
建機自動化:フジタや筑波大ら、複数建機が協調する「自動施工」公開 土工プロセスの“一気通貫システム”構築Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10