建機用フィルター技術を体調管理デバイスに応用、ヤマシンフィルタとミツフジが提携産業動向

建機用油圧フィルター大手のヤマシンフィルタとウェアラブルIoT製品を販売するミツフジは、戦略的アライアンスによる新製品の開発と社会実装を目的に、資本業務提携を締結した。ヤマシンフィルタが油圧フィルターのろ材開発で培ったナノファイバー技術と、ミツフジのウェアラブル技術を組み合わせ、着るヘルスケアデバイスや次世代電磁波シールドフィルターの製品化と社会実装を目指す。

» 2026年08月06日 18時16分 公開
[黒岩裕子BUILT]

 ヤマシンフィルタとミツフジは2026年7月29日、戦略的アライアンスによる新製品の開発と社会実装を目的とした資本業務提携を締結したと発表した。

 ヤマシンフィルタが建設機械用油圧フィルターのろ材開発で培ったナノファイバー技術と、ミツフジのソフトウエア開発/データ解析やウェアラブル技術を融合し、高精度な心電/心拍計測が可能な電極式の着衣型デバイスや通気/放熱性を備えた電磁波シールドフィルタの製品化を目指す。 両社は提携第1弾となる製品群の実証実験を進め、早期の量産体制構築と市場投入を目指す。

「戦略的アライアンスによる社会実装」を発表したヤマシンフィルタとミツフジ 筆者撮影
ヤマシンフィルタ 代表取締役 社長執行役員 山崎敦彦氏

 提携では、ヤマシンフィルタがナノファイバー技術の提供に加え、電極素材/電磁波シールドフィルタなどの機能素材の開発、量産化を担う。ミツフジは独自の銀めっき繊維「AGposs」やウェアラブル技術、ソフトウェア、データ解析アルゴリズムを提供する。ウェアラブル製品を通じた生体データ収集システムの実装や次世代電磁波シールドフィルタの市場展開を目指し、製品化から量産、販売まで一体で取り組む。

 ヤマシンフィルタ 代表取締役 社長執行役員 山崎敦彦氏は、「多くのフィルターメーカーではろ材を外部から調達しているが、当社は自社開発で質の高い製品を提供し、差別化を図ってきた。現在、ナノファイバーを使ったろ材を提供する中で、ごみを取るフィルターとしてだけではなく、熱を遮断し、音や電磁波をカットするなどの特徴を生かした用途があるのではないかと考えた」と取り組みの背景について語った。

 ヤマシンフィルタは2026年5月、信州大学とナノファイバーを軸に次世代機能素材の開発と社会実装を目指す共同研究プロジェクト「SHIN-PROJECT」を始動。環境/資源リスク、超高齢化/人手不足、次世代インフラ技術の3領域で、2030年の製品化を見据えた開発に乗り出した。

 山崎敦彦氏は「開発した素材を社会実装していくには自社単独では難しい。そこで、ウェアラブルデバイスや電磁波シールドといった分野で先を行くミツフジと戦略的アライアンスを締結した。社会の役に立つ製品を開発し、社会へ実装してく」と提携の狙いを語った。

次世代電極を使用したウェアラブルデバイスを開発へ

ヤマシンフィルタ 取締役副社長執行役員 山崎裕明氏

 また、ヤマシンフィルタ 取締役副社長執行役員 山崎裕明氏は、「フィルターの価値はごみを取るだけではない。当社が取り組むテーマは酷暑時代の体調管理と電磁波干渉の深刻化だ」と述べ、社会実装を目指す背景やターゲットとなる領域について解説した。

 山崎裕明氏は「気候変動によって酷暑日が増加し、熱中症リスクが高まる中、感覚に頼らない体調管理として常時モニタリングが今後さらに重要になる。現在普及している光学式のスマートウォッチなどは手軽に脈拍を測定できる一方、より正確な生体情報を取得するには電極式センサーが有効だ」と説明。一方で電極式は、装着時にジェルが必要になるなど着用のハードルが高いことが課題とされている。両社はミツフジのウェアラブル製品にヤマシンフィルタの極薄ナノファイバー技術を組み合わせ、ジェル不要で気軽に利用できる次世代電極の実用化を目指す。

 開発製品は、髪の毛の約120分の1の細さのナノファイバーが皮膚の凹凸に追従し、密着することで、身体を動かした際に心電図波形へ混入する体動ノイズを抑制する。繊維間に隙間があるため通気性も高い。ミツフジの「深部体温推定技術」などのアルゴリズムやアプリと一体化させることで、現場の暑熱対策や医療/日常の見守りで、誰もが気軽かつ正確に体調管理できる社会の実現を目指す。

次世代電極を使用したウェアラブルデバイスを開発へ 提供:ミツフジ
ミツフジ 代表取締役社長 三寺歩氏

 次世代電極を活用したウェアラブルデバイスを実用化すれば、ジェルや胸部ベルトを使わず着るだけで生体データを計測し、自覚症状のない体調不良の予兆を感知できる可能性がある。現場作業中の心電や心拍変動の変化から熱中症リスクを事前に検知することで、リスクの早期把握につながる。

 ミツフジ 代表取締役社長 三寺歩氏は「激しい動きの中でも体動ノイズを抑えた高精度な心拍の計測が可能になることで、医療分野で日常生活中のデータを取得するだけでなく、スポーツ分野で練習強度や試合中のコンディションを把握する用途にも利用が見込める」と説明した。

 また、製品の形態は大学病院などで試験を進めながら、着衣型とするか、ディスポーザブル電極(身体に直接貼り付ける使い捨て電極型)とするかを含め、市場ニーズに柔軟に合わせる方針を明かした。

「呼吸する電磁波シールドフィルタ」を実用化へ

 もう1つの開発テーマが、データセンターなどをターゲットとした電磁波シールドフィルターだ。電子機器を金属で覆う従来の電磁波対策では、電磁波を遮蔽できる一方、通気/放熱ができず熱がこもりやすくなる。両社は、ヤマシンフィルタのナノファイバーの通気構造と、ミツフジの銀めっき繊維の高い電磁波遮蔽性能を融合し、通気性/放熱性を確保して冷却効率を維持しながら、電磁波ノイズを必要水準まで低減する「呼吸する電磁波シールドフィルタ」を共同開発する。狭いすき間や複雑な形状にも、折る/曲げる/貼るといった多様な加工が可能で、布としても利用できる。

 データセンター向けだけでなく、電気自動車(EV)やドローンなどのモビリティ領域への展開も視野に入れる。

次世代電磁波シールドフィルタの利用イメージ 提供:ミツフジ

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