建設DXの推進を目的に建設テック企業が中心となり、2023年1月に発足した任意団体「建設DX研究所」。今回は、建設DX研究所に参画するBONXが、現場DXの過程で見えてきたデジタルと現場を隔てる最後のハードル「ラストワンマイル問題」について深掘りします。
「DX」という言葉が飛び交うようになって久しいですが、現場の肌感覚としてはいかがでしょうか。本部が導入した最新システムは、機能こそ立派で、使いこなせれば確かに便利かもしれません。しかし、実際にヘルメットを被り、タフな環境で働く現場の方々の手元に、その恩恵は本当に届いているでしょうか。
どれだけ高価なシステムを用意しても、結局のところ、現場で動く人が「使えない」のであれば、存在しないのと同じです。今、建設現場のデジタル化を阻んでいるのは、システムの性能ではなく、もっと物理的でもっとプリミティブな「インタフェース」の問題です。
本部から送られるデータは、瞬時に現場のスマートフォンに届きます。しかし、作業中のデスクレスワーカーにとって、ポケットの中にあるスマホを取り出すという行為は、想像以上にハードルが高いものです。
両手が塞がっている。足場の上でバランスを取っている。分厚い手袋をしている。そんな状況で、「通知が来たから確認してくれ」というのは、現場を知らない者の理屈に過ぎません。手袋を脱ぎ、画面を拭き、ロックを解除するまでの「わずか10秒」のために作業を止めるコストは、現場の集中力を削ぎ、安全を脅かします。
さらに深刻なのは、情報の「入力」です。現場のスマホでは複雑な報告がしにくいため、結局、確認や入力作業のためだけに現場から1キロ以上離れた事務所まで何度も往復することもあります。移動に伴う膨大なロスタイムが、現場の生産性をじわじわと低下させます。
デバイスと現場の間にある目に見えない断絶。ここが解消されない限り、現場のリアルタイムな情報は吸い上げられず、DXはただの「後出しの報告作業」に成り下がってしまいます。これが、建設業界におけるラストワンマイル問題の正体です。
そこで、私たちは改めて「音声」という道具を見直してみたいのです。現場で働くデスクレスワーカーの「目」は手元を注視し、「手」は材料を支えています。しかし、「耳」と「口」はいつでも自由なはずです。
耳と口という自由な領域をデジタルの入り口にすることで、現場の生産性は「気づかない」「入力の手間」「探す時間」という3つの非効率を排除し、劇的な進化を遂げるはずです。
第一の進化:「耳」で聞いて「気づかない」というロスを解消
まずは「耳」の活用です。これまでは通知が来るたびに手を止め、画面を覗き込む「中断」を強いるか、あるいは作業に没頭して通知そのものに気付かないかのどちらかでした。しかし、耳をインタフェースにすれば、システムの通知をリアルタイムかつ確実に受け取れます。
「搬入車両が到着した」「急な図面変更が入った」といった情報を、作業の手を止めることなくその場で把握する。耳で「気付かない」という状況を解消すれば、次の指示を待つ無駄な時間や古い情報のまま作業を進めてしまう“手戻りのリスク”が解消されます。情報の即時性こそが、現場全体の機動力を最大化させるのです。
第二の進化:「口」で呟いて「入力の手間」を即座に完結
次に「口」です。昨今の生成AIの登場によって、口が最強の入力デバイスへと進化しました。
「今日の配筋検査、特に問題なし。写真1番で保存して」
そう呟くだけで、報告や入力業務がその場で完結します。これまで事務所に戻って行っていた、または現場で手を止めて行っていた「入力する時間」をAIに任せることで、本業の密度を極限まで高めることができます。
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