花王は、ビル外壁の塗装や汚れが自発的に剥がれる新たな除去方法を開発した。サビや塗装の対象箇所に剤を吹き付け、乾燥すると塗膜が自然に剥がれ落ちる仕組みで、有機溶剤を使用せず、粉じんも発生しない。
花王は2025年12月1日、古い塗装や汚れをより簡便に除去するため、自発的に剥(は)がれる仕組みを備えた剥離除去技術を開発したと発表した。塗布して乾燥させるだけというシンプルな工程で除去が可能で、有機溶剤を使用せず、粉じんが発生しないことから、幅広いシーンで安全性の向上と環境負荷の低減にも貢献する。
ビルなど建物外装を補修したり塗装を塗り替えたりする際は、表面から劣化したものを取り除く作業が必要となる。建築現場では有機溶剤で溶かす方法や機械的に削り取る方法が用いられているが、作業負荷も高く、有機溶剤や発生する粉じんは、作業者や環境への負担となっている。
そこで花王の「バイオ・マテリアルサイエンス研究所」は、粉じんなどが空気中に舞わないように膜に閉じ込めて剥がし取る剥離除去に着目。通常の除去作業は広範囲に及び多くの労力を必要とするため、少ない力で簡単に剥がせるように、塗膜が自発的に剥がれ落ちる仕組みを持つ、これまでにない剥離除去技術の確立を目指した。
塗膜を自己剥離させるカギとなっているのは“内部応力”。内部応力とは、乾燥などによって塗膜が縮む際に生じる力のことで、塗膜と接着面を引き離す方向にはたらき、自己剥離を誘発する。
開発した剥離除去技術を用い、さまざまな素材に付着した汚れに対する性能を評価した。その結果、鋼板のサビ、ステンレス板の水性ペイントを除去可能なことを確認し、コンクリート表面では、表層を数十〜数百マイクロメートルの深さで取り除いた。いずれの評価でも塗膜は対象物を閉じ込めて自己剥離した。
花王が今回開発した剥離除去技術は、さまざまな素材に付着した汚れを除去できるだけでなく、塗膜が自ら剥がれるため、従来の除去方法と比べて作業負荷を大幅に軽減する。有機溶剤も使用せず粉じんも発生しないため、作業者と環境への配慮を両立した設計となっている。
今後は、ビル外装や船舶塗装の除去などへの実用化を目標に、他分野への応用展開についても検討を進める。
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