海洋デジタルツイン技術活用、ブルーカーボンを100倍高速/85%超の精度で認識デジタルツイン

富士通は、海藻/海草によるブルーカーボンを従来比100倍の速度かつ85%以上の精度で定量化する海洋デジタルツイン技術を開発し、Jブルークレジットの認証を取得した。

» 2025年12月02日 12時00分 公開
[BUILT]

 富士通は2025年11月26日、海洋環境の状態を仮想空間で再現/予測する海洋デジタルツイン技術研究開発の一環として、藻場のブルーカーボン定量化から回復/保全活動の支援までを一貫して行えるエンドツーエンドシステムを構築したと発表した。

 新技術は、海流の中でも誤差50センチ以内の位置精度でデータ計測可能な水中ドローン自動航行制御技術、海藻/海草の種類と被度を85%以上の精度で認識する藻場定量化技術、施策の効果を事前検証できる藻場創出シミュレーション技術の3つから成る。1ヘクタール当たり約30分と、従来より100倍高速に計測/定量化が可能となった。

海洋デジタルツインの構想と開発技術 出典:富士通プレスリリース

 濁った海中の不明瞭な藻類の画像から輪郭や色を鮮明化する技術と、対象物の認識技術により、複数種の藻を含む藻場の状況を正確に把握。さらに被度と種類に基づく炭素吸収量を数理モデル化した技術により、繁茂エリアのブルーカーボン定量化も実現した。日本の海域の8割をカバーできるという。

シミュレーションによる施策効果の事前検証。施策なしの場合、ウニの食害の広がりで藻場が減少し、藻の無い黒いエリアが増加している(左)。漁礁の設置とウニ駆除を実施した場合、全体的に藻場が増加(右) 出典:富士通プレスリリース

 また、海藻/海草と他の生態との共生や摂食関係、海水温などの海洋環境の変化や人工物設置といった人的介入の影響を多面的にシミュレーションできる。施策の有無や種類による総合的な効果の事前検証が可能になり、従来は専門家の知見や経験則に頼っていた藻場の回復/保全活動をより効率化できる。

エンドツーエンドシステムイメージ 出典:富士通プレスリリース

 新技術は愛媛県の宇和海において、宇和島市や地元漁協などと連携して実際の藻場定量化を実施。その後、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合にブルーカーボンクレジットの認証を申請し、95%の認定率でJブルークレジット認証を取得した。

 今後、各地の藻場回復/保全やJブルークレジット認証取得での活用に加え、洋上風力発電を含む海洋インフラの点検や海洋工事前後の環境調査などへの応用も見据えている。

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