今後の事業戦略で田中氏は、前提となる市場背景として、「インフラシェアリングの社会的役割が、従来のコスト削減手段からより多機能へと進化している」と言及した。携帯キャリアの競争領域が変化する中で、ネットワーク設備には一層の効率化が求められるようになった。通信インフラが施設設備の一部として扱われるようになり、求められるニーズもコスト削減からより多機能へと複雑化している。自然災害の甚大化に伴う迅速な復旧体制、人口減少や設備老朽化といった構造的課題への対応も不可欠となっている。
そのため、「安心して通信インフラを任せられる企業」への進化を掲げ、「面的拡大」「領域拡大」「社会課題の解決」の3つの重点施策を軸に成長戦略を展開していく方針を明らかにした。
面的拡大では、これまでIBSの導入は新築ビルが中心だったが、今後は全国に多数存在する4G設備の更改に合わせ、シェアリング型設備へ切り替える。2025年4月には、設備更改推進を担う専任事業本部を新設。通信キャリア4社のニーズに応じた柔軟な対応を行いながら、IBS導入の面的な広がりを目指す。
領域拡大では、通信キャリアのみならず施設側にとってもメリットのある新規共用機器や新サービスの開発を進める。具体的には、国内初となるオープンRAN対応の5G共用無線機(RU)を開発する。
社会課題の解決では、中長期的な視点で鉄塔の統廃合を見据え、持続可能なインフラ運用体制の構築に取り組む。2025年4月には、鉄塔のオペレーションを専門に担う事業本部を立ち上げ、体制を強化。沖縄県今帰仁村では、NTTドコモから取得した鉄塔で4キャリアによるタワーシェアリングが決定し、調整が整ったキャリアから順次運用を開始する。
田中氏は、「DigitalBridge傘下となった後もJTOWERの成長路線に変化はない」と強調。IBS事業では、新規導入と設備更改の両面から展開を進め、今後5年間で現在の約3倍となる累計2000件の導入を目標に見据える。屋外タワーシェアリング事業も、日本国内に約8万本ある大型鉄塔のうち、共用可能とされる約6万本の半数にあたる約3万本の運用体制を構築する計画だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.