パナソニック エレクトリックワークス社は、EV車用の充電器「ELSEEV hekia S Mode3」をモデルチェンジし、2025年7月22日に発売する。設計自由度、サービス拡張性、コストパフォーマンスを見直し、住宅に限らずマンションや商業施設も含む「共用型充電設備」のスタンダードとなるべく、2030年までに累計10万台の販売目標を掲げる。
パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニック EW社)は2025年5月26日、電気自動車(EV)用普通充電器「ELSEEV hekia S Mode3(エルシーヴ ヘキア エス モードスリー)」のモデルチェンジを発表した。
充電ケーブル付きのMode3新モデルは、設置自由度やサービス拡張性、コストパフォーマンスが大幅に向上し、住宅に限らず集合住宅や商業施設の非住宅領域にも積極的に提案していく。製品の受注は2025年6月20日から開始し、2025年7月22日から出荷する。
日本のEV普及率は、欧州や中国と比較すると遅れが指摘されている。2023年時点でEV/PHEVの新車販売比率は約2%と低調だが、2030年代には新車の電動化100%を国が掲げており、今後の加速が見込まれている。こうした中で、住宅や施設における「基礎充電」の重要性が高まっており、EVインフラの整備が喫緊の課題となっている。
発売に先立ち、大阪府門真市の大阪本社で開催した製品説明会で、電材&くらしエネルギー事業部 マーケティングセンターの田中氏は、「EVは単なる移動手段ではなく、災害時には非常用電源にもなる蓄電インフラとしての価値もある」と語り、建築設備や都市計画でのEV充電設備の位置付けを改めて強調した。
日本国内のEV普及率は1〜2%台にとどまり、欧州の主要国と比べて1/5以下にすぎない。その背景には、複数の社会的/構造的要因がある。
都市部では車の所有は「一家に一台」が一般的で、長距離移動のニーズが高く、充電設備の不足や航続距離への不安からEV車の購入をためらうケースが多い。EV充電設備を備えた駐車場の整備も進んでおらず、住環境による制約も大きい。
加えて、日本の電気料金は時間帯によって大きく変動し、夜間以外の充電コストが高くなりやすい点も心理的なハードルとなっている。さらに、多くのマンションや集合住宅では専用駐車スペースの確保が難しく、住民全員が公平に使えるEV充電器が求められるが、現状では具体的な運用方法が確立していない。
一方、欧州では寒冷地仕様で、駐車区画に標準で電源設備を設けている地域もある。EV導入を促進する税制優遇や購入補助も強力に機能しており、社会全体としてEV移行を後押ししている。
ただ日本でも、車載バッテリーの高容量化や充電器の高出力化は進んでおり、社会実装のハードルは下がりつつある。今回のモデルチェンジのように、充電インフラの設置や運用が柔軟になれば、一般家庭でもEV車はより現実的な選択肢になる。
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