建機操作の遠隔化は、九州地方整備局 九州技術事務所が実用化した座席にロボットを配置するタイプもあるが、アクティオは小型機ゆえに油圧バルブを改造する方法を採用した。春原氏は、「遠隔化には高感度カメラやIoTセンサー、駆動系など取り付ける機器が多く、(手間やコストが掛かるので)建機メーカーは大型機が中心となっている。コンパクト機はまだラインアップしておらず、当社との差別化になるポイントだ。狭いトンネルや狭小地の工事などの遠隔施工に導入提案していきたい」と狙いを語った。
機器の構成は、ジョイスティックやボタン、タッチスクリーンなどを搭載した遠隔操作用のコントロールユニット、広角や望遠、360度パノラマなどのカメラシステム、高解像度大型ディスプレイ、通信機器やGPS、加速度、ジャイロ、障害物検知などの各種センサー、操作インタフェースや安全管理システム、安全装置。
通信は、操作席からネットワークをソフトウェア管理するソフトバンクの「SD-WAN」でネットにアクセスし、法人向け衛星通信サービスのStarlink Businessを介して現場のWi-Fiで建機に接続する。アクティオは2024年5月からソフトバンクと共同で、Starlink Businessのアンテナやポータブルバッテリー、ソーラーパネル、Wi-Fiルーターなどの機材一式レンタルを始めている。
映像は、東京大学発スタートアップで遠隔就労支援プラットフォーム「JIZAIPAD(ジザイパッド)」を提供するジザイエ独自の映像圧縮技術を採用。ブレ補正付きの車載カメラと、距離感がつかめるパンチルトズーム付きの俯瞰カメラを建機に取り付け、操縦席の1画面に分割して表示する。遠隔操作時には多くのカメラ映像を見ることになるが、JIZAIPADのプラットフォームではAIカメラなどを後で追加しても、オペレーターの好みに合わせた画面構成にできる。映像遅延は0.5〜1秒ほどで、操作との誤差がほぼなく建機の挙動が正確に分かる。
安全面では、コックピット横で通信中は緑、遠隔操作の準備完了時は黄色、通信異常時は赤色のランプがそれぞれ点灯し、現場の状況を知らせる。人が近づくなど危険性のある場合は、建機に近づくことなく安全な場所から無線操作で非常停止できる。
今回のサービス開始前にアクティオは、九州テクノパーク統括工場 鹿児島姶良(あいら)工場と東京本社の約956キロをStarlink Businessで接続し、実証実験で有用性を確認した。
発表会でのデモは、1台の操縦席からバックホーで丸太とタイヤをつかんで、キャリアダンプに乗せて走行させる一連の作業を披露した。
遠隔建機の市場について北原氏は、「現在は移行期にあり、各社が保有するのはまだ先で、その間をレンタルが埋める。いつ起きるか分からない災害対応では1〜2カ月の稼働しかしないため、毎回購入するわけにもいかない。そのため、しばらくはレンタル需要が続くだろう」と分析した。
提供形態は、「基本は当社の扱う建機に遠隔装置を組み込み、ワンパッケージでレンタル提供する。既に能登で1件、福島で2件の引き合いが寄せられている。ただ、現実には現場ごとに求めるスペックが異なり、後付けできない機種もあるので、全てをレンタル展開するのは難しい。建設会社で稼働しているマシンに後付けしたいなどのオーダーがあれば、現地調査してから特注で個別対応する。検討者の要望があれば、東京都中央区〜千葉県市原市の遠隔デモも見学できる」と補足した。
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