建設機械にも“環境配慮”の波 静かでパワフルな最新GX建機の“試乗会”に潜入GX建機(2/3 ページ)

» 2025年05月15日 08時49分 公開
[川本鉄馬BUILT]

9年以上も持つリチウムイオンバッテリーを採用

 タイヤローラに搭載したバッテリーは111キロワットアワー(kWh)、313ボルト、354アンペアで、4〜5時間は駆動する。通常1日8時間の作業中にタイヤローラが稼働している時間から算出して製品設計した。

 西尾レントオールの藤井敬三氏は、「できればもっと長い時間動くように作りたかった。しかし、そのためにはバッテリーを多く搭載しなければならない。そうすると改造前の車両から重量が大幅に増え、新たな車両として認定を受ける必要が生じる。従来機に対する“改造車検”の範囲で車検を取るには、改造前の車両とスペックをほぼ同じにする必要があった」と裏話を語った。

電動タイヤローラの説明をする西尾レントオールの藤井敬三氏。酒井重工業製TZ701をリチウムイオンバッテリー化し、CO2排出のない作業を可能にした 電動タイヤローラの説明をする西尾レントオールの藤井敬三氏。酒井重工業製TZ701をリチウムイオンバッテリー化し、CO2排出のない作業を可能にした
電動化するためのさまざまな工夫。起動時の制御回路や補機などに使う電源には、マキタの電動工具用バッテリーを使用

 リチウムイオンバッテリーは、2800サイクルの充放電に対応する。年300日で計算すると、9年以上の寿命に相当する。全容量中70%までの利用が推奨される鉛バッテリーと比較して、容量の90%を使えるリチウムイオンバッテリーは稼働効率も優れる。

 なお、回生によるバッテリー充電はあまり利用していない(回生を生かすのも可能)。あえて回生を利用しない設定にしているのは、作業を行ったアスファルト路面に、“めくれ”などを生じさせないためとのことだ。

今後10年でレンタル可能な電動機器を3000台へ

 電動化は、建機メーカー各社が力を入れている分野だ。バックホウやホイールローダは、各メーカーが複数のモデルを発表している。しかし、電動タイヤローラはまだ市場に少ない。そのため、西尾レントオールと新トモエ電機工業が、他社に先駆けて開発した電動タイヤローラには現時点で先行優位性がある。

 ただこれからタイヤローラを含む電動建機が市場に続々と登場しても、西尾レントオールにとってはユーザーに提供できる機種が増えることにもなる。西尾レントオールは今後10年で電動建機を3000台に増やす目標を掲げており、その点でも電動建機のバリエーションが広がることは好ましいことだろう。

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