高所作業の転落をゼロに! フックを掛ける場所がなくてもOK、シンガポール発転落防止システムメンテナンス・レジリエンスTOKYO2024(1/2 ページ)

フルハーネス型墜落制止用器具の着用が完全義務化以降も、高所作業の墜落/転落事故は後を絶たず、建設現場ではさらなる安全対策が求められている。G-Placeは、その解決策として、シンガポールで安全な環境づくりの視点から生まれた常設型転落防止システム「アクロバット」を提案している。フックを掛ける場所がなくても、建物側にワイヤやレールの親綱を設置するため、安全な現場環境が構築できる。

» 2025年04月08日 12時42分 公開
[加藤泰朗BUILT]

 アイデアで未来をつくる創造総合商社「G-Place」の設備資材事業グループは、「メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024」と同時開催の「第11回 労働安全衛生展2024」に出展し、常設型転落防止システム「アクロバット」シリーズのデモを行った。

高所作業でさらなる安全対策が求められる理由

G-Placeの展示ブース G-Placeの展示ブース 写真は全て筆者撮影

 2022年1月2日から高所作業時の安全対策として、フルハーネス型墜落制止用器具の着用が完全義務化された。フルハーネス装着者は特別教育を受講する必要があり、安全対策は強化されつつある。

 しかし、厚生労働省の「令和5(2023)年労働災害発生状況」によると、全産業の死亡者755人のうち最も多い原因は「墜落/転落」(204人)となっている。休業4日以上の死傷者でも、「墜落/転落」(2万758人)は、「転倒」(3万6058人)、「動作の反動/無理な動作」(2万2053人)に次いで多く、高所作業での安全対策の重要性は依然として高いことがうかがえる。

 特に建設業は、死亡災害は減少傾向にあるものの、依然として墜落/転落は最も危険性の高い業種のひとつで、事故防止のさらなる強化が急務となっている。その課題に対応するシステムと訴求しているのがG-Placeの「アクロバット」だ。

現場にランヤードフックを掛ける場所がなくてもOK

 アクロバットは、2005年にシンガポールで設立されたAkrobat(アクロバット)が開発した転落防止システムの製品群。シンガポールではマリーナベイ・サンズやチャンギ国際空港などの有名ランドマーク、ドバイ国際空港のプロジェクトでも設置実績がある。G-Placeは、日本の総輸入販売元として、国内での展開を担っている。用途や設置環境に応じてさまざまなタイプがあり、今展では「水平型ワイヤタイプ」を中心に紹介した。

 水平型ワイヤタイプは、屋根上に固定したワイヤにハーネスのランヤードフックを掛け、作業者の転落を防ぐ。直径8ミリのステンレスワイヤを使用し、ハーネスに取り付けたランヤードフックを掛けるグライダー、ワイヤを支えるアンカー(中間/端部)、アンカーを屋根に固定するスパイダー、専用クランプ、さらに衝撃を吸収するショックアブソーバーなどで構成されている。

滑りにくい加工を施したアルミ製のキャットウオークなどと組み合わせた水平型ワイヤタイプ。ステンレスワイヤ、ランヤードフックを掛けるグライダー、屋根固定金具(スパイダー)、専用クランプ、端部に取り付けられたショックアブソーバーが見える 滑りにくい加工を施したアルミ製のキャットウオークなどと組み合わせた水平型ワイヤタイプ。ステンレスワイヤ、ランヤードフックを掛けるグライダー、屋根固定金具(スパイダー)、専用クランプ、端部に取り付けられたショックアブソーバーが見える

 ワイヤの配置は自由に設計でき、アンカーを2つ使用すればカーブをつくることも可能だ。そのため、空調機器や太陽電池モジュール、排気ダクトなど屋根上の障害物を避けながら、安全な移動経路を確保できる。また、屋根の形状に合わせた専用クランプが用意されており、取り付けも容易。特に縦ハゼ式折板屋根では、取り付け時に孔をあける必要がなく、雨水の浸入リスクを防げる。

縦ハゼ式折板屋根用のクランプ。取り付けに孔あけ不要 縦ハゼ式折板屋根用のクランプ。取り付けに孔あけ不要

 グライダーは特殊設計されており、中間アンカー部分でランヤードフックを掛け替える必要がない。作業の流れを妨げず、スムーズな動きを実現。作業者のストレスを軽減することで、墜落制止用器具の適切な装着を促し、安全性の向上につながる。

水平型ワイヤタイプの使用イメージ。ランヤードフックを掛け替えなしで、中間アンカー部分を移動できる 水平型ワイヤタイプの使用イメージ。ランヤードフックを掛け替えなしで、中間アンカー部分を移動できる
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