建設ナレッジシステムではAIも活用している。AI導入による効果が分かりやすいのが、図面認識アルゴリズムによる図面情報の活用と生成AIなどの活用による自然言語での検索だ。
図面関係では、情報の抽出にAIの深層学習と画像処理を用いている。そのため、平面図面から面積領域を推定し、部屋名などの文字情報も認識して面積を算出できる。
生成AIによる自然言語の検索は、既に広く社会で使われているが、構造計画研究所でも建設に特化した利用の検証を重ねている。建設会社が保有するデータは、発注者や設計者の著作権制約があるため、どのように情報を取り込むかという課題があるためだ。
補足として本多氏は「一般公開されている情報に加え、それぞれの企業が蓄積した社内基準や設計マニュアル、施工要領書などの社内情報を読み込むことで、各企業のルールに準じたオリジナルの回答を導ける」と多様なデータを取り扱う利点を話す。
注意しなければならないのは「生成AIは便利だが、万能ではない」ことだ。そのため、構造計画研究所では業務フロー全体でのデータ活用をはじめ、導入前から顧客と一緒に考えるコンサルティングも含めて導入を進めている。
本多氏に代わって登壇した宇野もも子氏は、最適化技術が物流の課題改善にどのように役立つかを解説した。
日本では深刻な働き手不足や厳格な労働時間の制限によって、いわゆる「物流2024年問題」がクローズアップされている。対処しない場合、2030年には現在と比較して輸送力が34%不足するとの試算もある。運賃の上昇はもちろん、物資の輸送ができないというリスクにも直結する。
ただ、現状では貴重な輸送リソースを十分に生かし切れていない部分もある。宇野氏は輸送能力の6割が未使用で、荷待ちと荷役で3時間超を費やしている問題点を指摘し、人手不足以外に業務の無理や無駄を改善するのが急務とした。
とはいえ、建設に関わる物流は「現場工程が多い」「長尺物や受注生産の一品物」「狭小現場」「積み荷持ち帰りも存在」など特有の課題があり、改善の難易度が高い。そのため、宇野氏は「必要なのは効率化の加速とノウハウの継承だ」と強調した。
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