全国建設業協会は、都内で2024年度の技術研究発表会を開催した。高度技術部門の最優秀賞に錢高組 技術本部技術研究所主席研究員 角田晋相氏が発表した「換気設備の自動制御による電力削減事例」が、創意工夫部門の最優秀賞に山辰組 専務 馬渕剛氏が発表した「草の酸素供給型高速焼却装置『モヤッシー』」が選出された。
全国建設業協会(全建協)は2024年11月22日、都内で2024年度の技術研究発表会を開催した。優秀事例に選ばれた高度技術部門6事例、創意工夫部門5事例の中から、高度技術部門の最優秀賞に錢高組 技術本部技術研究所主席研究員 角田晋相氏が発表した「換気設備の自動制御による電力削減事例」が選出。創意工夫部門の最優秀賞には山辰組 専務 馬渕剛氏が発表した「草の酸素供給型高速焼却装置『モヤッシー』」が選ばれた。
技術研究発表会は、会員企業技術者の「技術力と資質の向上」と「プレゼンテーション能力の向上」に寄与することを目的に開催。2024年度に応募のあった建設工事の施工の工夫や改善事例、新技術の開発、活用事例から、優秀事例として選定された11事例の発表を行い、各部門の最優秀賞を選出した。
全建協会長 今井雅則氏は「建設業は現在約480万人の就業者を抱えているが、今後10年で100万人の減少が予測されており、危機的な状況にある。この状況を乗り越えるためには現場レベルから研究所レベルまで、あらゆる側面で生産性向上に取り組まなければならない。会員同士で情報交換を含めた横のつながりを持ち、建設産業全体が足並みをそろえて、技術開発や生産性向上、社会課題の解決に取り組んでいただきたい」と述べた。
最優秀賞を受賞した角田氏は「今回発表したのはカーボンニュートラルに向けた技術。建設業でもますます脱炭素の取り組みが盛んになる。この技術が少しでも役に立てれば」とコメント。馬渕氏は「現場の社員や協力会社の社員が、課題解決のために試行錯誤して築き上げてきた技術。受賞を本当にうれしく思っている」とあいさつした。
錢高組の角田氏は、トンネル施工現場の坑内換気設備を自動制御するエネルギーマネジメントシステム「TUNNEL EYE」を導入し、作業環境を確保しながら、消費電力と電力由来のCO2排出量削減を図った事例を発表した。
トンネル工事におけるCO2排出量原単位は土木工事全体の平均値を上回っており、使用電力の約半分を換気が占めている。錢高組ではTUNNEL EYEを開発し、施工現場に導入。粉塵(じん)対策などによる作業環境の改善と消費電力削減の両立を図った。
システムは、トンネル坑内への入坑者、重機/車両の位置や稼働状況などの情報をもとに作業工程を判断し、あらかじめ設定した運転パターンで換気設備を制御。従来の粉塵濃度に応じて換気設備を自動制御するシステムと異なり、粉塵濃度が高くなる作業工程を判断して、濃度が高まる前に運転を切り替える。これにより、作業環境の向上や電力消費量削減の他、人為的なミスや操作の遅れによる作業環境の悪化を防止する。
TUNNEL EYEを中部地方整備局発注の「令和2年度153号新伊勢神トンネル工事」に導入した結果、自動制御による適正運転により、23.8%の電力削減と、それに伴うCO2排出量を削減した。一方で、夏の運用では気温や湿度を考慮した運転制御が求められるなど、年間を通して自動制御を行うに当たっての課題も抽出できたことから、今後も現場導入を進めながらシステムの改善を進めていくと報告した。
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