“匿流”強盗団の窓破りをグミのようなSG膜で完全防御 セコムの防犯ガラス新建材(1/2 ページ)

記憶にまだ新しいルフィ事件や白昼の銀座で時計店押し入り、ここ最近は過疎地のポツンと一軒家も狙われ、日本全国で強盗事件が多発している。犯行の手口も、白昼堂々集団で、大型のバールなどの器具で窓ガラスを破って侵入するというこれまでにあまりなかった手法が増えている。ホームセキュリティサービスを展開するセコムは、警備会社の視点から、集団強盗の進入口を完全に遮断し、警備スタッフが駆け付けるまでの時間を稼ぐ、新たな窓ガラスを開発した。

» 2024年05月31日 17時37分 公開
[石原忍BUILT]

 セコムは2024年5月30日、強靭(きょうじん)な「SG膜」を使用した防犯合わせガラス「SECOMあんしんガラスSG」を発売した。

 新しい防犯ガラスは、警視庁が呼称する「匿流(とくりゅう):匿名・流動型犯罪グループ」に代表される凶悪な組織犯罪の増加に伴う、防犯意識の高まりに応えるべく、従来の防犯ガラスを素材から見直した。セコムによると日本初となるSG膜を防犯ガラスに採用したことで、ガラス破りによる侵入を確実に防ぎ、強固な防犯用品として一般住宅をはじめ、貴金属店や1枚が数百万円にもなるトレーディングカード専門店などにも提案していく。

SG膜は従来素材と比べ、厚さ2倍、硬度100倍、強度5倍

2024年5月30日に都内セコム本社で開催した「SECOMあんしんガラスSG」のデモ 2024年5月30日に都内セコム本社で開催した「SECOMあんしんガラスSG」のデモ 写真は全て筆者撮影

 セコムは2003年6月に旭硝子(現AGC)と防犯合わせガラスを共同開発し、翌2004年4月には防犯ガラスの販売や施工、割れ換え業務を担う専門会社「セコムウィン」を設立。以降、現在まで窓の防犯/防災対策の知見とノウハウを蓄積してきた。

 新製品開発の背景について、セコム 営業第四本部長 兼 セコムウィン 社長 佐藤謙一氏によると、刑法犯の認知件数は「2002年のピークから減り続けていたが、2022年に20年ぶりに増加に転じた。2023年も2年連続で上昇し、侵入犯罪の認知件数も前年比で19.1%増加するなど、犯罪情勢の悪化が懸念されている」と説明する(参考:警視庁「令和5年の犯罪情勢」)。

セコム 営業第四本部長 兼 セコムウィン 社長 佐藤謙一氏 セコム 営業第四本部長 兼 セコムウィン 社長 佐藤謙一氏 

 セコムの独自調査でも、2023年に不安を感じた出来事として、空き巣などの住宅侵入や強盗事件が上位に入り、今後の治安悪化や犯罪増加に不安を感じている人が76.0%に上るなど、「安全安心」へのニーズは確実に高まっている。

2022年を機に犯罪件数は増加に転じた 2022年を機に犯罪件数は増加に転じた 提供:セコム
セコムウィン 取締役 増田準次氏 セコムウィン 取締役 増田準次氏

 特にコロナ禍明けの2022年から顕著になっているのが、警視庁が“匿流”と定義する特殊な組織犯罪の急増だ。山間部の“ポツンと一軒家”や都内の貴金属店、カードショップなどが狙われるケースが多発し、「複数犯」「大型破壊器具」「白昼堂々」といった犯罪の手口も変化している。セコムウィン 取締役 増田準次氏は、「ルフィ広域強盗事件後に、セコムのセキュリティサービスやカメラなど当社への問い合わせが6倍に増えた。既存の防犯あんしんガラスの受注は前年比で約7倍。日本社会全体で、防犯意識が確実に高まっている」と語る。

 こうした防犯需要の高まりや新たな犯罪手法に対応すべく、セコムが開発したのが今回一般住宅にも販売するSECOMあんしんガラスSG。ガラスとガラスの間に約3ミリのSG膜を挟み、通常の合わせガラス用中間膜に比べ、約100倍の硬度と約5倍の強度を誇る。長さ1メートルのバールで10回叩いても飛散せず、大きな穴もこじ開けられない。その秘密は、これまでは主にガラスフェンス(バルコニー)やガラス階段、側壁(てすりの下部分)など建材用途で使われていた強靭なSG膜にある。

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