熊谷組とアクティオは、トンネル施工時に軌道装置内への作業員の立ち入りをAIで検出する「軌道装置接近警報システム」を開発した。脱着可能なカメラと警報出力機構を一体化し、AIの画像処理で、安全通路にいる人は除外して、軌条内にいる人物のみを検知する。
熊谷組は、アクティオと共同で、トンネル施工時に軌道装置内の安全性向上を図るため、人物検知による接近警報システムを開発したと2024年1月23日に発表した。
軌道装置とは、事業場附帯の軌道や車両、動力車、巻上げ機などを含む一切の装置で、動力を用いて軌条により、労働者や荷物を運搬する。新システムは、脱着可能なカメラと警報出力機構をユニット化させ、AIを用い軌道内の人物を検知する。
建設機械作業範囲内への人の立ち入りに対し、各種センサーによる警報装置や停止装置やカメラによる人物検知技術などが、現場適用されている。熊谷組では、脱着可能なカメラと警報出力機構をユニット化し、トンネル施工時の軌道装置の編成長に関わらず使用できる汎用的な警報ユニットを開発した。
システム構成は、カメラユニット内の無線カメラと監視モニターユニット内の映像受信機とを無線伝送してつなぐ。人物検知処理は、監視モニターユニット側のメインPCで処理を行う。人物検知システムは、カメラユニットの映像データを、監視ユニット側で受信した映像で前方監視を行いながら、映像をもとにAIで人物検知を処理し、AI処理結果から出力変換して警報器を鳴らす。
AI画像処理では、事前処理として、シールド坑内の走行映像を選定したカメラで数回動画を撮影した。撮影時は、人を配置して、収録した人物のいる画像フレームにタグ付けして教師データとして学習することで人物検知が可能となる。さらに手すり内安全通路にいる人は除外し、軌条(レール)内にいる人だけを検知させるように再学習を行った。検知したい領域以外にマスクを掛け、映像に重ね合わせ、検知領域のみを検出することで軌条(レール)内だけにいる人のみを認識する。
また、カメラ映像伝送の適合性に関する要素実験は、内径2.55メートルのシールド坑内で行った。シールド坑内という閉鎖空間での映像伝送が可能かどうか、直線、曲線、障害物などの条件を変えて確認。カメラを固定して、受信器とモニターを徐々に離し、モニター画像が乱れたところの距離を計測した。障害物の無い坑内直線では290メートルまで伝送が可能で、全く見通せない半径25メートルの急曲線を挟んでの伝送距離は186メートルとの結果を得た。
試行試験は、ユニット収納ケースを作成し、実運用を想定した内径2.55メートルのシールド坑内で実施した。その結果、走行時の伝送通信は画像が乱れることなく、人物検知は手すり内外での識別検知も確認し、システムの有効性が証明された。
今後は、現場開始時よりシステムを導入搭載させ、現場での安全性向上につなげる。熊谷組では、「特に動力車の後押し走行では、オペレーターへの安全運転サポートに威力を発揮できる」としている。さらに、バッテーリー機関車とシステムを連携させ、坑内自動走行の開発も進めていくという
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