基本計画でBIMが生きたのは、合意形成の場面だった。基本計画の打ち合わせには明治大学から複数の担当者が参加することになっていた。そのため、茂住氏は3Dのラフパースを積極的に使って、空間構成を共有することに努めた。茂住氏は「情報共有によってプロポーザル時には含まれていなかったセンターコモンズという大規模吹抜け空間を、プロポ受託後に採用できた」と、その成果を強調した。
新校舎内に設ける図書館には、用途上、家具や什器を大量に配置する必要があり、書架オブジェクトの幅や段数から収蔵冊数を集計する数式を組んだ他、Archicadの「表現の上書き機能」で、冊数や座席数を一覧表で常に確認できるフォーマットを作成した。茂住氏は「平面図にゾーンの色分けを自動でしてくれる機能だけでも、作業負担が軽減された」と語る。
構造と設備の設計でも、Archicadの機能で省力化につなげた。今回のプロジェクトは、本来は15メートルの高さ制限がある敷地に、許可申請を経て高さ31メートルの建物を建てる計画のため、限られた階高で最大限の気積を確保する空間構成と、それに適した空調方式の選択が不可欠だった。
そこで茂住氏は、プレキャストコンクリート(PCa)床版を構造フレームに用いた空間構成と、低層部3階までは床吹出し空調、4階以降は共用部廊下に通したダクトと天井のPCa床版の間に配したパネルを使った放射(輻射)空調を採用した。
構造フレームと空調方式の決定後は、構造と設備との取り合いのスケッチを何度も描き、BIMで再現してチーム内で検討を重ね、その結果を社内の設備BIMチームと共有した。「全フロアではないが、課題になりそうな箇所でBIMを用い、事前の設計段階で発見した」(茂住氏)。
外装計画と構造とが密接に絡む部分は、意匠側で簡単な構造モデルを作成。Archicadの「表現の上書き機能」でフロアラインからはみ出す梁(はり)や現場緊張を入れる梁、二重スラブの部分などを確認できるようにして、毎週の定例会議に諮り、少しずつ問題を解決するフローで取り組んだ。
日射遮蔽(しゃへい)効果のシミュレーションは、Archicadの「日影シミュレーション機能」を用い、基本設計から徐々に実施設計のフェーズに移っていく過程での矩計図の検討、基本設計などでよくある色分け図などにはArchicadの「表現の上書き機能」などを活用した。
外構整備もかなり広範囲にわたるため、ArchicadのBIMモデルをランドスケープチームが使用していた3Dモデルと、Lumion上で統合して情報共有した。
面積表も、Archicadアドオンの「MassPlan(マスプラン)」でExcelに書き出している。概算数量は、壁種などをあらかじめ設計レベルで丁寧に作っておくと数量拾いは楽になるが、算出された数量をセルフチェックする必要があると感じたとのことだ。
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