3D都市モデルのPLATEAU普及とともに、都市計画や建築計画の現場で3Dモデル活用が広がりつつある。ホロラボが開発したWebアプリケーション「torinome(トライノーム)」は、PLATEAUのオープンデータをベースに、GISや画像、動画、3Dモデルを重畳して、住民を含む関係者間で計画や業務内容を視覚的に共有して、スムーズな合意形成が図れる点が街づくりに関わるステークホルダーから注目を集めている。
建設生産プロセスの各段階では、これまで図面や写真、イラストなどを基に情報共有して業務を進めるのが常だった。こうした2次元的なデータは専門性が高く、理解できる人は一部のノウハウを持つ専門家に限られていたり、現場状況を正確に反映することが難しかったりと複数の課題を抱えている。3Dデータの活用も進んでいるものの、データの重さや扱いづらさがネックとなり、全ての人が扱える環境整備は整っていないのが現状だ。
しかし、近年はそうした3Dデータの活用を容易にするさまざまなクラウドサービスのリリースが相次ぎ、ユーザーの拡大が進んでいる。
街づくりの計画や検討の段階では、自治体職員やコンサルタントといった専門家だけでなく、一般市民を交えて議論を進めることが重要となる。今後の街の姿を共有したり、災害リスクを周知したりと多くの合意形成を図る場面が生じるからだ。従来は、地図やテキスト中心の資料で、議論をしてきたため、人々に興味を持ってもらいにくく、イメージ共有も難しかった。
近年、こうした街づくりのイメージを誰とでも共有できるツールとして、国土交通省の主導で日本全国の3D都市モデル化を目指す「Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)」で公開されているオープンデータの利活用が盛んになってきている。PLATEAUのビュワーは、性能が高く、誰でも自由に都市データを出力して使えるため、街づくりの計画立案はもちろん、さまざまな分野でのユースケース開発やハッカソンでも普及が進んでいる。ただ、PLATEAUのビュワーはあくまでもモデルデータの閲覧に特化しているため、自由度が少ない。
PLATEAUをベースに街づくりの計画検討に適したツールとして、デベロッパーや自治体から注目を集めているのがホロラボが提供するデジタルツインプラットフォーム「torinome(トライノーム)」だ。AR(拡張現実)やMR(複合技術)などのxR技術を掛け合わせ、3D都市モデルの新たな使い方を提案している。
torinomeは、都市に関する多様なデータを可視化する3D地理情報システム(GIS)「torinome Web」を基盤とし、3Dデータを現実に立体化するARアプリ「torinome AR」、スケール自在なカード型ARアプリ「torinome Planner」の3つのシステムから成る。
torinome WebはPLATEAUの3D都市モデルに、ユーザーが持つ3Dデータや点群データ、テキスト、画像、動画など、多岐にわたるデータ形式を都市モデル上でシームレスに重畳表示するツール。
通常のWebブラウザで利用可能な点が大きな特徴で、ワンクリックでさまざまなデータを位置情報とひも付けし、自由自在に都市のデータを引き出して共有できる。
torinome ARは、torinome Webに登録したデータを現実空間で確認できるツール。torinome Webで完成イメージの3Dデータなどを配置し、現地でタブレットのアプリを開くと3DCGが実寸大で表示される。データを重ね合わせたまま見せたい位置や角度で写真や動画を撮影すれば、完成パースにも使え、torinome Webにアップロードすれば、共有もシームレスに行える。
torinome Plannerは、街づくりの計画検討で扱うことに特化したツール。紙の地図上に置いた建物などのカードをiPadでのぞくと、3Dモデルが浮かび上がる。街づくりのプランニングやワークショップ用に開発され、模型を使わずに簡単に都市計画の具体的なイメージを目の前にして議論ができる。カードの配置はtorinome Web上に反映されるため、現地にいればtorinome ARとの併用でリアル空間との比較検討も実現する。
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