パシフィックコンサルタンツは、ダッソー・システムズが提供するCADソフトウェア「CATIA」と「XFlow」で、インフラ構造物のパラメトリックデザインや構造解析シミュレーションといった設計自動化に取り組んでいる。
ダッソー・システムズは、SIMULIAブランドの最新情報を紹介する年次コミュニティー・カンファレンス「SIMULIA Community Conference Japan 2023」(会期:2023年9月20日、赤坂インターシティーAIR)を4年振りにオンサイトで開催した。
テーマごとに分かれたセッションの1つ、「熱・流体トラック」会場では、パシフィックコンサルタンツ 国土基盤事業本部 砂防部 兼 本社 品質技術開発部 つくば技術研究センター 菊池将人氏が登壇。
菊池氏は、「土木分野における新たなBIM/CIMソリューションによる生産性改革の取組み」と題し、土木の砂防分野を例に、5年前から開発に取り組む、ダッソーシステムズのハイエンドCADソフトウェア「CATIA(キャティア)」を活用した土木構造物の自動設計モデルと、「XFlow(エックスフロー)」を連携させて、構造物の機能や効果などを3次元空間上で検討するシミュレーション手法を紹介した。
パシフィックコンサルタンツは、インフラ、建築、レジリエンスなどの領域におけるエンジニアリングと、社会インフラサービス事業を展開する総合建設コンサルタント会社。菊池氏は入社以来、土木の砂防分野で業務に携わってきた技師だ。
菊池氏は、講演で紹介する2つのソリューションの開発に着手した理由を土木分野で生産性向上の取り組みが進まないためとし、「他業種同様に、土木分野でも人手不足が深刻化している。特に作業員の高齢化が著しく、10年後には現作業員の多くが引退するといわれ、生産性向上が喫緊の課題となっている。ただ、このことは、私が入社した6年前にも言われていたことで、当時から状況は変わっていない」と話す。
なぜ、生産性向上が一向に進展しないのか。菊池氏はその要因は3つあると指摘する。
そのうちの1つが、土木分野特有の設計の進め方だ。「例えば橋梁(きょうりょう)の詳細設計では、200枚以上の図面を作成するが、現状では人の手により、2次元で描くことが主流だ。ただ、もし柱の一部を1センチ変更する場合、数メートルごとに作成する横断図全ての修正を手作業で行うことになり、時間も掛かり、図面間の不整合が生じるリスクも高い」(菊池氏)。
第2の要因も、図面を人力で描くことに起因するもので、「トライアル(検証)作業も人の手に依存している」と挙げる。「砂防堰堤(えんてい)で、どの程度の土砂を堰(せ)き止められるかを検証する際に、現状では止められる土砂を全て図面に描いて計測している。例えば高さ10メートルで設計した堰堤で堰き止められる土砂量が不十分という結果になれば、12メートルに変更して検証し、今度は多すぎたので11メートルで…、と同じ作業を延々と人力で繰り返す。こうした作業フローも、生産性向上を阻害している」(菊池氏)。
3つ目は、土木構造物が自然の地形を対象にしていることにある。菊池氏は、「砂防施設は、似たような形状をしているので、使い回しが可能と思われがち。現場ごとに地形や地質条件が全く違うため、一度作ったものをそのまま次に用いることは難しい」と語る。
こうした課題の解決策で、菊池氏が開発に取り組んでいるのが、CATIAを用いた土木構造物の自動設計モデルと、CATIAやXFlowを連携させたシミュレーションだ。
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