大林組は、BIMモデルから省エネ性能計算情報を自動抽出する設計支援システム「SmoothSEK」を開発した。SmoothSEKは、BIMを一気通貫で共有する“BIMワンモデル”で一元化された情報を扱うため、自己検証や外部評価のデータに齟齬がなく、BEI値算出に必要な情報を正確に抽出できる。
大林組は2023年8月9日、イズミシステム設計と共同で、RevitベースのBIMモデルからZEB認証の申請に必要な省エネ性能計算情報を自動抽出する業界初の設計支援システム「SmoothSEK(スムーズセック)」を開発したと公表した。「建築物省エネ法で規定された標準入力法とBIMの自動連携」では、業界初という。
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2025年には改正建築物省エネ法が施行されるなど、建築物のZEB化のニーズが高まっている。その中で、ZEB認証の申請では建築物省エネ法で規定された「標準入力法」を用いて、省エネルギー性能を算出することが一般的だが、建築・設備の設計図書から外皮性能や全室の床面積、設置されている設備機器などの情報を抽出し、計算プログラムに取り込むための入力シートを手動で作成するなど、多大な時間と労力が必要となっていた。
大林組は、自社のBIMモデルを作る基準と定める「SBS(Smart BIM Standard)」に基づきBIMワンモデルの設計〜施工〜維持管理での一貫利用を推進しており、SmoothSEKをBIMワンモデルと連携することで、省エネルギー性能の評価が正確かつ円滑に行える。
さらに、既にBIMワンモデルを活用した避難安全検証の「SmartHAK」と耐火性能検証の「SHAREDTIK」を運用しているため、そこにSmoothSEKが加わることで、より高度で効率的な法的審査情報の抽出が可能となる。
ZEB認証の取得には、建築物の省エネルギー性能をBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)認証で評価する必要があり、BELS認証はBEI値(Building Energy Index)を指標に、基準建築物と比較したときの設計建築物の一次エネルギー消費量の比率を評価する。ただ、BEI値はさまざまなデータから算出されるので、各データの正確性と円滑な計算が重要となる。
SmoothSEKは、BIMワンモデルにより一元化された情報を使用するため、設計過程での内容の漏れや齟齬(そご)、自己検証や外部評価で使用するデータの違いによる不整合がなく、BEI値算出に必要な情報を正確に抽出する。
SmoothSEKは、標準入力法に必要な情報を建築・設備情報が入力されたBIMワンモデルから抽出し、SBSに対応したイズミシステム設計が提供する設備BIMクラウドサービス「B-LOOP」に保管する。省エネルギー計算は、イズミシステム設計の標準入力法と住宅に関する省エネ計算の入力支援ソフト「A-repo」に連携させ、省エネルギー性能の正確な算出が可能になる。
省エネルギー性能算出の自動化により、図面の照合作業が不要になったことで、作業時間を約50%短縮するとともに、検証作業の省力化にもつながる。
また、設備設計には、多岐にわたる機能別の計算が必須だが、システムでは各種計算評価アプリケーションとのデータ連携により、省エネルギー計算にそれぞれの計算結果を自動反映させられる。そのため、今後は、性能基準であるBEI値への貢献比率が高い空調仕様の選定では、熱負荷計算を詳細検討する建築設備技術者協会が公開している動的熱負荷計算プログラム「NewHASP」対応の空調設計系アプリケーションと、BIMデータとの連携を構築を予定している。
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