Safie Pocket2 Plusの製品発表会では、実機を用いて会場とセーフィー本社を映像でつなぎ、会話をしながらのデモンストレーションも行った。事前に用意していた仮の木枠を使いながら、金物の取り付け位置やボルトの締結部を確認していき、リモートでの施工管理を再現した。
新機能を存分にアピールしながらも、「これで完成したとは思っていない。あくまで、ユーザーの方々に使ってもらってからがスタート」と杉本氏。さらなる機能拡充に向け、忌憚(きたん)のない声をヒアリングしつつ、製品のブラッシュアップを図っていきたいと抱負を語った。
発表会後半には、大林組 土木本部 先端技術推進室 ICT生産支援センター現場支援第一課 兼 DX本部 生産デジタル部 課長 高橋寛氏と、鹿島建設 技術研究所 AI×ICTラボ 副主任研究員 西澤勇祐氏が登壇。セーフィー 営業本部第2ビジネスユニット部長 桜田忠弥氏がモデレーターを務め、建設業の2024年問題をテーマにしたパネルディスカッションを展開した。
冒頭は、「建設業の2024年問題に対してどのような課題を抱えており、どう解決されてきたか」の題目で、両社の対応策をそれぞれ紹介した。
大林組の高橋氏は、「当社の土木部門では、2024年問題に適応するための地盤固めが1年前倒しでひとまずクリアした。これから先、継続的に実践するなかで、臨機応変に対応していきたい」と語った。
その中で大林組が注力しているのが、人とロボットの連携によって持続可能な建設プロセスを実現させる「ロボティクスコンストラクション構想」。ロボットによる生産性向上や省人化をはじめ、ヒト/コト/モノのデータ化で高品質なモノづくりを目指す。既に2023年4月の組織改編では、新部署の「先端技術推進室」を立ち上げ、国内外の現場でICT活用を進めている。「協力会社も含めた業界全体で見ると、まだまだ課題は多々あるが、当社がけん引していけるように、積極的に取り組んでいかねばならない」とした。
鹿島建設の西澤氏は、「かねてより2024年問題に対して危機感を感じており、建設業界の他企業に先駆け、以前から遠隔臨場を実施してきた」とし、Safie Pocketシリーズを全現場に導入している。
働き方改革の実現に向けた施策では、建設業務のあらゆる建設生産プロセスをデジタル変革する「鹿島スマート生産ビジョン」を解説した。遠隔臨場だけでなく、危険作業のロボット活用、設計検討のデジタル化、BIMによるデータ蓄積やプロセス最適化なども含め、研究開発を進めている。「高齢化率も高まり、業界全体で持続性が危機的状況にある。DXの機運は高まっているので、全社一丸となって力を注いでいきたい」と言い切る。
セーフィーの桜田氏が投げかけた「生産性向上についての具体的な取り組みはどんなものがあるか」の質問に対しては、西澤氏が返答。「“管理業務の半分は遠隔で”をキーワードにしている。具体的には、Safie Pocketによる遠隔臨場、バイタルデータを計測して作業員の健康を管理するウェアブルデバイス、顔認証システムでの入退場管理など。今後は、ドローンやロボットを用いて、現場データを収集し、解析していけるシステムを構築したい」と展望を話す。
高橋氏は、2019年から導入しているSafie Pocketの使い勝手の良さに言及。「遠隔臨場による移動時間の短縮に伴い、残業が大きく減った」と副次的な導入メリットを述べた。加えて、「さらなる新しい使い方も模索している」とし、デジタルツールの活用研究に特化させた「デジタルコンシェルジュ」という22人のメンバーで、各現場に必ず常駐させ、一層の有効活用を探っているそうだ。
最後の質問は、「Safie Pocket2 Plusを活用されてみての感想は?」。高橋氏は、バッテリーとLTE通信機器が一体化した点を評価し、「手振れ補正やズーム機能も合わせて、従来機器と比べて使いやすさは段違い」とうなずいた。
西澤氏は、独自の使用例として、「三脚を立てて、固定カメラとして使っている」とした。普段の作業は若手社員に任せ、管理者はその様子を確認しながら事務所で作業をするなど、勤務時間の有効活用をしている。「こうした監視カメラのような使い方は、長時間撮影に伴うバッテリーの消費が課題となるが、今回の機能拡張で(モバイルバッテリーの直接給電が可能になり)改善されたので、使用時間を心配せずに問題なく使えている」と笑顔を見せた。
桜田氏は、「ユーザーに使っていただくと、想定以上の活用を独自に編み出されたりして(研究開発の)参考になる。引き続きユーザー目線での要望は積極的に取り入れ、利用者とともにSafie Pocketのさらなる改良を進めていく」と言葉を結んだ。
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