連載第18回は、合成開口レーダ(SAR)やRTK-GNSSなどの技術を用いて人工衛星で取得したデータとAIのインフラ分野を対象にした最新研究を紹介します。
近年は、人工衛星で取得したデータの活用が進んでいます。衛星を利用することで、遠隔から広域の計測が可能となり、気象/環境/防災/測位などでの応用が拡大しつつあります※1。今後は、インフラマネジメトのスマート化に向けた基幹技術の1つになると期待されています。
※1 衛星データプラットフォーム「Tellus」公式メディア「宙畑」
大規模災害の際には、被害の全体像を迅速に把握することが重要です。地上からのアクセスが断絶した状況であっても、衛星画像は広域を高い精度で観察することができる有力な手段です。下図は、衛星画像にAIを適用することで、地域全体の建物について1棟ごとに被害を判別している例です※2。建物を無被害、損傷、倒壊に分類し、損傷や倒壊建物についてはブルーシートで被覆されているかどうかについても判別しています。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 AI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
下図のように、災害前後の画像を、判読した被害や建物とともに俯瞰的に可視化することができれば、被災状況を把握して関係者で情報を共有したり、対応を検討したりするのに有効です※3。
※3 「災害時にも使えるフェーズフリーな衛星データの利活用」酒井直樹,田口仁,六川修一/AI・データサイエンス論文集4巻L1号p9-18/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2023年
災害時の衛星活用には、衛星が災害時に必ず被災箇所を通過して撮影するとは限らず、仮に撮影していても雨天などで雲に覆われていたり、夜だったりすると良好な画像が取得できないといった課題があります。
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