人工衛星×AIを防災/インフラに活用した最新研究 地盤沈下検出や長期モニタリング【土木×AI第18回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(18)(1/2 ページ)

連載第18回は、合成開口レーダ(SAR)やRTK-GNSSなどの技術を用いて人工衛星で取得したデータとAIのインフラ分野を対象にした最新研究を紹介します。

» 2023年03月31日 10時00分 公開

 近年は、人工衛星で取得したデータの活用が進んでいます。衛星を利用することで、遠隔から広域の計測が可能となり、気象/環境/防災/測位などでの応用が拡大しつつあります※1。今後は、インフラマネジメトのスマート化に向けた基幹技術の1つになると期待されています。

※1 衛星データプラットフォーム「Tellus」公式メディア「宙畑」

災害時に威力を発揮する衛星画像×AI

 大規模災害の際には、被害の全体像を迅速に把握することが重要です。地上からのアクセスが断絶した状況であっても、衛星画像は広域を高い精度で観察することができる有力な手段です。下図は、衛星画像にAIを適用することで、地域全体の建物について1棟ごとに被害を判別している例です※2。建物を無被害、損傷、倒壊に分類し、損傷や倒壊建物についてはブルーシートで被覆されているかどうかについても判別しています。

被害判別結果の例(左:衛星画像と目視判読結果、右:被害判別結果) 被害判別結果の例(左:衛星画像と目視判読結果、右:被害判別結果) 出典:※2

※2 「熊本地震におけるWorldView-3画像を用いたU-Netによる建物被害自動判別手法の開発」内藤昌平,土屋美恵,友澤弘充,田口仁,藤原広行/AI・データサイエンス論文集3巻J2号p255-267/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2022年

連載バックナンバー:

“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト

本連載では、土木学会 AI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。

 下図のように、災害前後の画像を、判読した被害や建物とともに俯瞰的に可視化することができれば、被災状況を把握して関係者で情報を共有したり、対応を検討したりするのに有効です※3

豪雨時の被害可視化の例 豪雨時の被害可視化の例 出典:※3

※3 「災害時にも使えるフェーズフリーな衛星データの利活用」酒井直樹,田口仁,六川修一/AI・データサイエンス論文集4巻L1号p9-18/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2023年

 災害時の衛星活用には、衛星が災害時に必ず被災箇所を通過して撮影するとは限らず、仮に撮影していても雨天などで雲に覆われていたり、夜だったりすると良好な画像が取得できないといった課題があります。

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