住友林業は、アキレスやGCJとともに、「土壌生分解性ツリーシェルター」を共同開発した。今後は、2023年3月までに商品化し、コストダウンを進め、2030年度には国内で利用されるツリーシェルターの全てが植物由来原料を含む素材となるように取り組む。
住友林業は、アキレスやGCJとともに、「土壌生分解性ツリーシェルター」を共同開発したことを2022年11月10日に発表した。
国内では、戦後植林された人工林の多くが伐採期を迎え、伐採と再植林が全国各地で進んでいる。しかし、ニホンジカや野ウサギなどが植林したばかりの木を食べる被害が林業の現場では大きな問題となっている。
鳥獣被害を防ぐ手段としては、再植林地全体を囲う防護柵(防護ネットなど)が最も多く用いられているが、メンテナンスの人手が不足しており、近年では植林した木を一本ずつ覆う単木保護資材(ツリーシェルターなど)も広く使用されている。
だが、現在利用されている防護ネットやツリーシェルターの素材は、主にポリプロピレン製で、設置後の回収作業や廃棄に労力とコストがかかるため、森林内に放置される恐れがあった。
そこで、住友林業、アキレス、GCJの3社は、土壌生分解の効果がありながら従来品と同等程度の強度がある素材を開発し、その素材を使った土壌生分解性ツリーシェルターを試作し、森林での実証試験を行ってきました。
土壌生分解性ツリーシェルターは、ポリプロピレン製品の代替として植物由来原料を含む生分解性樹脂を使用している。利用後は、森林の中で土壌中の微生物により自然に分解され環境負荷が少ない。シェルターを運び出す作業も不要となり、運送や焼却処分で発生するCO2を減らせる他、撤去する作業員の負担を軽くし、回収・廃棄コストをカットする。
なお、環境省の公募で一般社団法人日本有機資源協会が採択した「令和2年度脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」として2020年から2022年まで、土壌生分解性ツリーシェルターの開発と実証試験を行った。
実証試験では、植物由来のPLA(ポリ乳酸)を含む生分解性樹脂を原料とした土壌生分解性ツリーシェルターの植林木成長性、資材の強度、分解性能などを、従来のポリプロピレン製ツリーシェルターと比較して検証した。
その結果、従来品に相当する植林木の成長と資材の強度が確認され、土中に埋めることにより分解がさらに進む素材であることが実証された。
各社に役割に関して、住友林業は実験する森林と木製の支柱を提供し、アキレスは土壌生分解性ツリーシェルターに使う素材を開発して、GCJはシートの加工と固定器具の供給を行った。
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