動画とAIを活用したトンネル掘削時の地山評価システムを開発、福田組とNECAI

福田組は、NECとともに、山岳トンネル工事現場で常時行われている地山の良否を評価する作業を支援するために、動画とAI(人工知能)を活用した地山評価システムを開発した。今回のシステムは、トンネル掘削時の動画をAIが解析して地山状態をレポートすることで、トンネル技術者の業務を支援し、長時間にわたる現場の立会いから技術者を開放して、働き方改革の一助となることが期待されている。

» 2022年11月09日 09時00分 公開
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 福田組は、NECとともに、山岳トンネル工事現場で常時行われている地山の良否を評価する作業を支援するために、動画とAI(人工知能)を活用した地山評価システムを開発したことを2022年10月11日に発表した。

グラフ上の任意点を選択すると該当する時間の撮影シーンを容易に確認可能

 トンネル技術者は、1日1回の頻度で実施する切羽(きりは)観察によって地山の良否を評価して、支保パターンの妥当性や追加対策の要否を判断しているが、掘削後の切羽だけでなく、掘削時における地山の崩れ方や音といった挙動も合わせて観察することで、判断材料となる情報が豊富になり、より的確な地山評価が行えるとされている。

 一方、国内では、働き方改革や生産性向上が求められる中で、トンネル技術者が切羽に長時間立ち会い、掘削時の地山挙動を直接観察することが困難になってきている。

 そこで、福田組は、NECとともに、トンネルの掘削状況を自動で観察する方法が効果的と考え、動画とAIを活用して地山状態を判定するシステムを開発した。

システムの概要 出典:福田組プレスリリース

 地山評価システムは、従来型の画像解析技術やAI画像認識技術、音声解析技術を要素技術として活用しており、市販のビデオカメラ、学習済みのAIモデルを搭載した解析サーバ、解析結果を可視化する閲覧アプリケーションで構成されている。

 具体的には、切羽で撮影した掘削時の動画をクラウドにアップロードおよび解析サーバで解析することで、掘削によって地山の崩れる様子が自動で検知され、これに基づいて地山状態の良否を評価する。

 なお、解析結果は、動画経過時間と地山状態を評価したレベル表記との関係をグラフ化した経時変化図などで見える化され、レポートとして自動生成される。さらに、シーンサーチ機能を利用して、グラフ上の任意点を選択すると該当する時間の撮影シーンを容易に確かめられる。ちなみに、現場のトンネル技術者がこの評価結果と検知箇所の動画を確認することで、追加対策の要否判定を容易に行える。

地山の崩れ方にもとづく地山状態のカテゴリー分類 出典:福田組プレスリリース

 既に、福田組は、施工を進める「岐阜山県第一トンネル(仮称)東地区工事(中部地方整備局発注)」の一部区間でシステムを試行し、有効性を確認した。使用したシステムでは、掘削時のこそく作業の様子を撮影した動画と地山状態のカテゴリー分類をAI画像認識の教師データとして機械学習させた。

 試行の結果、掘削時の地山が崩れる様子に関して、小規模な崩れ方(レベル1)は坑内照明に起因して検知困難なケースもあったが、ある程度の規模(レベル2以上)であれば対部分を検知することができた他、検知箇所のレポートにおける地山状態のレベル判定は大半が妥当だった。

 また、とくに切羽に立ち会うことが少ない夜間における地山状態の把握や補助工法の要否判定で有効なことが分かった。今後、福田組では、システムの改善を行い、全国のトンネル現場に展開する。

掘削時動画の解析結果例 出典:福田組プレスリリース

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