トンネル掘削発破を震源とする長距離探査法、切羽前方350mまで地山状況を把握可能山岳トンネル工事

大成建設は、トンネル掘削発破を震源とする長距離探査法「T-BEP」を開発した。T-BEPを適用することで、探査用発破が不要となり工期短縮が図れるとともに、切羽前方350メートルまでの地山状況を把握し、トンネル工事の長期的な施工計画の立案が可能となる。今後は、とくに地表からの事前調査では調査精度が低下しやすい土被り区間(トンネルの標高と地表面の標高の差が大きい区間)に対してT-BEPを提案し、山岳トンネル工事の安全性と効率性を向上させる。

» 2021年12月09日 09時00分 公開
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 大成建設は、トンネル掘削発破を震源とする長距離探査法「T-BEP(Blast Excavation Prospecting)」を開発し、トンネル掘削工事の現場で、その効果を確認したことを2021年11月29日に発表した。

約4カ月でトンネル施工計画の立案が可能

 山岳トンネル工事では、大量湧水が想定される湧水帯や岩盤が脆い状態になっている破砕帯がある場合に、その位置や規模などをできるだけ早期に把握し、掘削作業の安全性や作業効率を考慮して、多様な対策を講じることが求められる。

 さらに、これまで山岳トンネル前方の地山状況を把握するための方法としては、坑内で探査用発破により生じる地震波(振動波形)を活用する弾性波探査※1が用いられてきた。しかし、従来の方法は探査のみを目的として発破を行っており、そのため工事を中断しなければならない他、探査で使用する火薬量の制限から切羽前方探査距離は最大でも約150メートルで、長距離に渡り地山状況を把握することは困難だった。

 そこで、大成建設は、トンネル掘削発破を探査震源として使えるように、発破方法と地震波の受振装置に改良を施し、従来方法の2倍以上となる0〜350メートル前方の地山状況を把握する長距離探査法のT-BEPを開発した。

「T-BEP」の概要図 出典:大成建設プレスリリース

 T-BEPは、トンネル掘削用の発破を震源とするため、これまで毎月約1回の頻度で終日掘削を止めて行っていた探査用の削孔、装薬、発破に関する一連の作業が不要となる。加えて、発破の時間間隔調整と受振装置の設置方法に改良を施し、地中を伝わってきた弾性波を高感度で精度よく把握可能なシステムを構築した。

 大成建設では、福井県で行った「荒島第一トンネル建設工事」で、T-BEPの効果を検証。その結果、従来方法の2〜3倍である0〜350メートル前方の破砕帯を探査した後、トンネル掘削により実際の破砕帯位置を正確に捉えていたことを確かめた。また、これまでの探査法と比べ、早期に切羽前方の地質を可視化するため、約4カ月でトンネル施工計画の立案が行える。

「T-BEP」の探査比較実験結果 出典:大成建設プレスリリース

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