AIの画像処理速度を従来の4倍にする技術を開発、OKIとMipsology SASAI(1/2 ページ)

沖電気工業は、OKIアイディエスやMipsology SASとともに、OKI独自のAIモデル軽量化技術「PCAS」とMipsology SAS製のAI処理高速化プラットフォーム「Zebra」を連携することで、AIモデルに内在する不必要な演算を自動的に削減し、処理を高速化する技術を開発した。現在、新技術のサービス化を目的に研究開発を進めている。

» 2022年10月25日 07時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]

 沖電気工業(OKI)は2022年10月17日、OKIアイディエスやMipsology SASとともに、OKI独自のAIモデル軽量化技術「PCAS(ピーキャス)」とMipsology SASのAI処理高速化プラットフォーム「Zebra(ゼブラ)」を連携して、AIモデルに内在する不必要な演算を自動的に削減し、処理を高速化することで、従来と比較して約4倍のAI画像処理速度60fps以上を達成する技術を開発したことを発表した。

 同日に都内で開催した新技術を紹介する記者発表会では、OKI イノベーション推進センター長 前野蔵人氏、同センター AI技術研究開発部長 須崎昌彦氏、OKIアイディエス 代表取締役社長 執行役員 滝澤家信氏、Mipsology SAS カントリーマネジャー 藤谷つぐみ氏が新技術について説明した。

 その後、新技術で最適化したAIモデルを備えたFPGA※1で、USBカメラで取得した画像の処理作業(撮影対象の可視化など)を行うデモンストレーションを披露した。

※1 FPGA:製造後に購入者や設計者が構成を設定可能な集積回路で、プログラマブルロジックデバイスの1種で、現場でプログラムが行えるゲートアレイ。

演算の有効性はGPUだけでなくASICを上回る

OKI イノベーション推進センター長 前野蔵人氏

 OKIの前野氏は、「当社のイノベーション推進センターでは、インフラの老朽化や自然災害への対策といった社会課題を解消するソリューションの開発を進めている他、ISO 56002に準拠したイノベーション・マネジメントシステムの“Yume Pro※2”をセンター内で展開し、AIエッジ※3技術の開発に取り組んでいる。。Yume Proでは、5技術領域を対象に17項目・35テーマの研究開発を行っており、17項目のうちの“コンパクトなAI”で、今回発表する新技術の研究開発を実施している」とあいさつした。

※2 Yume Pro:OKIが、社会課題や顧客の課題をイノベーションで解決することを目的に実施している新規事業の創出プロジェクトで、イノベーション推進センター内の全社員が参加している。

※3 AIエッジ:AIを搭載した端末で、AIにより特定の演算や画像解析などを処理する。

「Yume Pro」のイメージ
「Yume Pro」で研究開発を行っている5技術領域の35テーマ
Mipsology SAS カントリーマネジャー 藤谷つぐみ氏

 Mipsology SASの藤谷氏は、「当社は、創業メンバーが開発したスーパーコンピュータ向けのエミュレーションシステムを販売した収益を資本金に、“AI推論の高パフォーマンスソリューション開発”を目標に掲げ、2015年に設立された仏ベンチャー企業だ。2017年には、GPUとCPUの処理作業をプラグ&プレイ※4でFPGAに代行させられるAI処理高速化プラットフォームのZebraをリリースした」と語った。

※4 プラグ&プレイ:PCや端末、周辺機器に接続あるいはインストールすると、各機器に搭載されたOSが自動的に必要な設定を行うこと。

 Zebraは、利用者のニーズに合ったニューラルネットワーク※5を学習したAIの推論作業にかかる時間を短縮するとともに、高い推論精度と対応力を維持する。さらに、PyTorchやTensorFlow、ONNXといったフレーム上で動作するため、さまざまな環境でAIによる推論作業が行える。さらに、演算の有効性では、GPUだけでなくASIC※6を上回り、最適な演算効率を達成し、低消費電力を実現する。

※5 ニューラルネットワーク:人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)を模した、さまざまなシステムを連結したネットワーク。

※6 ASIC:特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路。

AI処理高速化プラットフォーム「Zebra」の活用イメージ
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