大林組は、トンネルの掘削面や吹付けコンクリート面の出来形測定と作業の監視を遠隔操作で行える「出来形・監視UGV」を開発した。
大林組は、トンネルの掘削面や吹付けコンクリート面の出来形測定と作業の監視を遠隔操作で行える「出来形・監視UGV(Unmanned Ground Vehicle)」を開発したことを2022年10月17日に発表した。
山岳トンネル工事では、掘削や吹付けコンクリートの出来形を目視で確認する。しかし、目視でのチェックは作業員の経験に左右されるため、定量的な判断が行えない。一方、出来形の確認や作業の監視は、人が切羽や重機の近くで実施するため、土砂と岩盤が崩れる「肌落ち」や重機に接触するなどの災害リスクがある。
そこで、大林組は、出来形測定をするためのスキャナーと、作業状況を監視するための切羽用カメラを搭載した出来形・監視UGVを開発した。
出来形・監視UGVは、サイズが縦1.2(縦)×1.0(横)×1.5(高さ)メートルで、切羽(きりは)用カメラの他にも4台の移動用カメラが前後左右に取り付けられており、カメラで取得した映像を無線LANにより伝送し、最大で400メートル離れた場所でも遠隔操作が行える。
さらに、湧水箇所や小岩塊がある路盤の悪い場所でも走れるため、作業員が切羽や重機に近づく必要がなくなり、安全性を確保したまま定量的な出来形測定や作業の監視による品質管理が可能となる。
具体的には、出来形・監視UGVは、切羽や重機に近づき、搭載したスキャナーで、掘削や吹付けコンクリートの出来形を測定する。装着されたスキャナーは、3次元絶対座標で測定した結果を設計断面と比較し、掘削形状、吹付けたコンクリートの仕上がり面、吹付け厚の3種類をその場で算出することで、高精度な出来形管理に応じる。
備えられた切羽用カメラは、無遅延のカメラを使用することで、人の目に代わって切羽の状況を遠隔からでもリアルタイムに確かめられるため、切羽に人が近づかずに業務が行え、作業の安全性を向上する他、遠隔臨場、AIによる切羽評価、崩落検知システムにもカメラで得られた映像を活用することで、より安全性を高められる。
また、出来形・監視UGVを利用することで、吹付け機をリモコンで遠隔操作しながら、カメラ映像で遠隔監視とスキャナーによる吹付け不足箇所の確認を同時に実現し、安全性と品質を同時に確保しながら施工が行える。
なお、出来形・監視UGVは、大林組が開発を進める統合システム「OTISM(Obayashi Tunnel Integrated SysteM)」内にある計測・評価システム「OTISM/MONITORING」の構成技術。
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