高砂熱学が安全快適で感染症対策も備えた「体育館用空調換気システム」をつくばみらい市で実証BAS(1/2 ページ)

高砂熱学工業は、体育館の空調を対象に、夏の熱中症と冬の底冷えを防ぎ、感染症対策も備えた簡単設置の空調換気システムを開発し、つくばみらい市の小学校で性能検証を行っている。

» 2022年10月08日 13時00分 公開
[BUILT]

 茨城県つくばみらい市と高砂熱学工業は2022年10月4日、体育館向けに冷暖房を備えた空調換気システムの実証試験を、市から実証フィールドとして提供された富士見ヶ丘小学校体育館で開始したと明らかにした。

夏の熱中症、冬の底冷え、感染を防ぐ体育館用空調換気システム

 体育館は、授業をはじめ、季節イベント、地域住民のスポーツ練習場所、災害時の避難所など、多岐にわたる用途で利用されている。しかし、夏の暑さや冬の寒さは年々厳しさを増しており、特に夏の猛暑での体育館内の環境は、競技やイベントの参加者はもとより、見学者も熱中症のリスクを伴う。

 災害時に体育館を避難所として利用する際は、暑さ寒さに加え、換気やプライバシー確保の問題が想定される。加えてコロナ禍では、避難する年齢層が乳幼児から高年齢層までと幅広く、新型コロナウイルスへの感染対策として体育館全体をカバーする換気システムが重要であり、密集した空間でも安全に過ごせる仕組み作りが求められている。

 そこで高砂熱学工業は、つくばみらい市と2020年に締結した包括連携協定における防災分野での協力をもとに、高砂熱学グループの日本ピーマックと共同で機器を開発。2022年8月に、市の指定緊急避難場所/指定避難所に指定されている富士見ヶ丘小学校での工事が完了し、実証試験を開始している。

 体育館向けの空調換気システムは、主にビニール風船型吹出し口と室外機一体型の空調機で構成。熱中症対策では除湿した冷却空気、寒さ対策では床面への暖気の供給をともに新鮮外気で行い、同量を排気して熱回収することで、通常時はもちろん避難所利用時にも対応した熱中症、防寒、感染対策を兼ね備えている。

体育館用空調換気システムの概要 出典:高砂熱学工業プレスリリース

 夏期は、室下部から低速給気し、室上部から排気する置換空調を構築しているため、居住域だけを効率良く冷却する。冬期には、室下部から高速給気し、床面のコアンダ効果※2により、中心部まで暖気を到達させる。空調エリアを居住域に限定することで、一般的な空調方式と比較して年間で消費エネルギーの大幅削減が見込める。

※2 コアンダ効果:ルーマニアの工学者アンリ・コアンダが名前の由来で、空気や水などの流体噴流が粘性により周りの流体を引き込み、壁面に沿って流れやすくなる現象のこと

 換気効率では、新鮮な外気を直接冷却/加熱して室内へ供給するので効率が良く、窓開け換気の必要も無いため、虫の侵入なども防げる(居住域に限った換気回数はおおよそ5回/時間)。

体育館用空調換気システムの外観(屋内) 出典:高砂熱学工業プレスリリース
体育館用空調換気システムの外観(屋外) 出典:高砂熱学工業プレスリリース

 夏期は空気の密度差を利用した空調方式となり、室内空気より重たい冷気が重力で部屋の隅々まで拡がるため、避難所テントなどの障害物があっても部屋の四隅まで全体を冷却。さらに、居住域での空調の立ち上がり時間が速く、空調を運転する時間も短縮される。

 また、夏期は冷却除湿を行うため、競技時には汗が速やかに蒸発して冷却されるので、皮膚温度を下げられる。同時に競技者の汗の落滴も抑えられるため、汗拭きや着替えの回数が少なくなり、床の落滴によるスリップ事故の防止にもつながる。室内競技は風速の上限値を求められていることが多く、競技に影響を及ぼさない室内気流(冷房時の室内平均風速で毎秒0.15メートル以下)を実現している。

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