コンクリート打設時の先送りモルタルが不要な工法を開発、大林組導入事例

大林組は、エコスティックとともに、圧送整流プラグとハイブリッド配管を使用することで、コンクリート打設時の先送りモルタルが不要になる「ノンモルタル工法」を開発した。今後、両社は、ノンモルタル工法を建設現場へ導入し、脱炭素社会の実現と建設業の生産性向上に貢献する。また、エコスティックは、ハイブリッド配管とハイブリッド配管を装備した特殊ポンプ車「ジェシカ」の販売とサポートを行う。

» 2022年10月07日 13時00分 公開
[BUILT]

 大林組は、エコスティックとともに、圧送整流プラグ※1とハイブリッド配管※2を使用することで、コンクリート打設時の先送りモルタルが不要になる「ノンモルタル工法」を開発したことを2022年9月20日に発表した。

※1 圧送整流プラグ:強力な摩擦抵抗と完璧な遮断力をもつゴム製のボール。配管内に設置することで管内の流れを調整し、流動性を保ったままコンクリートを圧送することが可能。

※2 ハイブリッド配管:配管全ラインが同一内径で統一され段差がなく、2種類の継手の組み合わせにより揺れを防ぎ、伸縮しない配管。

廃棄モルタルの回収・保管、産業廃棄物としての処分費用が全て不要に

 通常、ポンプ車により圧送を行うコンクリート打設では、配管が詰まることを防ぐために、モルタルを先行材として使用している。しかし、利用した先送りモルタルは、全てが産業廃棄物として処分されており、大林組の試算によれば廃棄されるモルタルは国内の建設現場全体で年間60万立方メートルに達する。

 さらに、生コンクリートは、水、セメント、砂、砂利などが含まれる混合体で、先送りモルタルなしで圧送を行うと、小さくて軽い砂利のみが早く進み、先頭部分で生コンクリートが脱水して流動性が失われ、配管が詰まる。

 一方、原料であるセメントの生産で生じるCO2排出量は、大林組の試算によれば年間23万トンに上る他、先送りモルタルの準備と廃棄にも手間がかかっている。

 そこで、大林組とエコスティックは、圧送整流プラグとハイブリッド配管を使用し、先送りモルタルを使わずコンクリート打設が行えるノンモルタル工法を開発した。

 ノンモルタル工法は、生コンクリートを圧送するハイブリッド配管の先頭部に圧送整流プラグを搭載することで、プラグの強い配管抵抗により疑似的に配管内を満水状態にし、水、セメント、砂、砂利の流れが制御され、配管が詰まることを防げる。

従来工法と「ノンモルタル工法」の比較 出典:大林組プレスリリース

 活用する圧送整流プラグには、強い遮断力があり、先行水を大量に入れても後から圧送されるコンクリートに混入することがない。加えて、内面が平滑化されたハイブリッド配管を用いることで、接続部の伸縮やブームの揺れを抑えられるため、配管内が詰まらず高品質なコンクリートを打設可能。

 ノンモルタル工法を導入する利点は、コンクリート打設時の先送りモルタルをなくすことで、廃棄モルタルが減らせ、建設業界における脱炭素化に貢献する他、先送りモルタルを利用しないため、モルタルの材料費や廃棄モルタルの回収・保管、産業廃棄物としての処分費用が全て不要になる点。

 また、ハイブリッド配管に圧送整流プラグを搭載することで、先送りモルタルを投入せずにコンクリートの投入が行えるため、数十秒で打設を始められるだけでなく、約200メートルの配管打設で従来の方法と比較して、打設のスタートを約30分早くできる。なお、先送りモルタルの準備作業や廃棄で必要な運搬作業などにかかる時間もなくなる。

 既に、大林組は、福島県いわき市の生コン工場敷地内でノンモルタル工法の実証実験を実施している。その結果、品質や施工性に問題がないことを確認し、開削道路トンネル建設工事に適用した。

実証実験でのコンクリート打設状況と吐出状況 出典:大林組プレスリリース
開削道路トンネル建設工事における初適用の状況、左から、現場適用時のコンクリート打設状況(ポンプ車の後方)、現場適用時のコンクリート打設状況(ポンプ車の前方)、コンクリート吐出状況 出典:大林組プレスリリース

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