同社の新サービスがターゲットに定める賃貸管理会社はいま、大手企業への集約が急速に進む再編時代に突入している。住宅改良公社とニッセイ基礎研究所の推計によると、2020年における賃貸管理会社上位15社のシェアは32%にも上る。
さらに2021年6月には、賃貸住宅管理業法が施行され、管理戸数が200以上の賃貸住宅管理業者は国土交通省への登録が義務付けられた。登録業者には、業務管理者の配置や重要事項の説明、定期報告などの義務が課されるため、現場の負担増から、今後も大手企業への集約が進むと予測される。
従事者の高齢化問題も、不動産業界の抱える課題の1つだ。総務省「平成27年(2015年)国勢調査結果」によると、不動産業従事者の平均年齢は56歳で、65歳以上の構成比が33%を占める。他産業の情報通信業が41歳、65歳以上が2%なことと比べると、厳しい現状が際立つ。渡邉氏は「日本社会は高齢化による深刻な人手不足に悩まされている。不動産業界は3人に1人が65歳以上であり、その問題に他の業種よりも先んじて直面している」との危機感をあらわにする。業務効率の向上は、もはや不動産業界共通で取り組むべき喫緊の課題となっている。
そのため、解決策として不動産業界ではDXが加速している。不動産テック7社/1団体が実施した共同調査では、不動産のDXに取り組む不動産事業者は2022年に全体の90%となる218社となった。前年の130社から160%超の奔騰だ。その理由には2022年5月に不動産電子契約が解禁されるなど、政府も不動産DXの流れを後押ししていることがある。総額4.2兆円ともいわれる不動産管理業の市場は今後も、不動産テックの力で、効率化やシステム化がより一層進むことが予測される。
渡邉氏はこうした現状認識に立ったうえで、「スマートロックで、賃貸管理業務のあらゆる課題を解決し、DXに貢献できると確信し、システム開発を進めた」と、自信を示す。
Akerun.Mキーレス賃貸システムが具体的に提供する価値は、「物理鍵を扱うことに伴う煩雑業務の解消」と「物理鍵の貸与によるセキュリティリスクの解消」の2つ。
管理会社の日常業務には、内見時の鍵の受け渡しや回収業務、入居中の鍵紛失などのトラブル対応、退去時の鍵交換や鍵回収といった、さまざまな物理鍵の煩雑業務が存在する。不動産管理業界では、社員1人で2000〜3000物件を管理できるかが、重要な経営指標といわれる。物理鍵で行う業務の煩雑化は、1人当たりの管理戸数の減少に直結するため、可能な限り減らしたいのが賃貸管理業者の本音だ。
また、物理鍵の貸与には、さまざまなセキュリティリスクが伴う。近年、賃貸業界で多く採用されている物理鍵の保管方法に、キーボックスがある。ダイヤル式の鍵が付いた箱を建物に設置し、現地で物理鍵を保管するものだが、その抜け穴を悪用し、インターネットで不正に購入した違法商品を賃貸住宅の空き家で受け取るという事件が発生している。ほかにも、集合ポストで保管していた物理鍵を複製され、住居スペースに侵入されてしまい盗難などにつながるケースもある。
キーレス化により、業務効率化とセキュリティの問題点を一挙に解決するのが、Akerun.M キーレス賃貸システムというわけだ。
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