盤内温度を最大約10度下げる屋外分電盤の商品化と新築物件への導入が決定、竹中工務店導入事例

竹中工務店は、セイリツ工業、SPACECOOL、大阪ガスとともに、ゼロエネルギーで冷却できる放射冷却素材「SPACECOOL」を盤表面に貼り付けることで盤内の温度上昇を抑制する暑熱対策屋外分電盤「COOL分電盤」を商品化し販売している。また、第1号案件として、竹中工務店が施工中の新築物件にCOOL分電盤を採用することが決定した。

» 2022年08月26日 07時00分 公開
[BUILT]

 竹中工務店は、セイリツ工業、SPACECOOL、大阪ガスとともに、ゼロエネルギーで冷却できる放射冷却素材「SPACECOOL」を盤表面に貼り付けることで盤内の温度上昇を抑制する暑熱対策屋外分電盤「COOL分電盤」の商品化を決定したことを2022年8月4日に公表した。

SPACECOOLを分電盤以外の用途にも展開

 分電盤は、電気を配線に分配する装置で、漏電遮断器などが内蔵され、電気を安全に使用するための安全装置として機能している。しかし、分電盤に内蔵される電子機器は熱に弱く、盤内が高温になると機能や寿命に影響を与える可能性がある。

 一方、分電盤に内蔵されることがあるインバータや蓄電池、パワーコンディショナーなどの電子機器は、一般的に使用する環境の温度が高いと劣化が早まる。例えば、多様な電子機器に搭載されているコンデンサーは、使用温度が10度上がると劣化速度が2倍早くなるとされている。

 そのため、従来の屋外分電盤では、盤内に内蔵した冷却機器を用いて、盤内の温度が一定以上にならないように冷却するなどの対策を行っている。さらに、近年では、地球温暖化の影響により屋外機器の故障リスクが高まっており、これまで以上の熱対策が求められている。

 そこで、竹中工務店は、セイリツ工業、SPACECOOL、大阪ガスとともに、暑熱対策屋外分電盤のCOOL分電盤を開発した。COOL分電盤は、フィルム状のSPACECOOLを分電盤の表面に貼り付けた暑熱対策屋外分電盤で、これにより、盤内の温度上昇の抑制を実現し、電子機器の寿命延長や冷却用空調機の使用電力削減で省エネ効果を達成する。

暑熱対策屋外分電盤「COOL分電盤」 出典:竹中工務店プレスリリース

 使用する放射冷却素材のSPACECOOLは、大阪ガスが開発した素材で、太陽光を反射するとともに、搭載された放射冷却技術で熱を逃がし、直射日光下でもエネルギーを用いずに外気温よりも温度を下げられる。

 竹中工務店、セイリツ工業、SPACECOOL、大阪ガスの4社は、COOL分電盤の効果を検証する実証実験を2021年8月にスタートし、SPACECOOLを分電盤の表面に張り付けることで、盤内温度が最大約10度下がることを確認している。

 具体的には、屋外にCOOL分電盤、従来分電盤、遮熱塗料分電盤、遮光板付分電盤を並べ、分電盤内部の温度を計測する実証試験を実施した。実証実験では、内部に発熱体を伴う電子機器が入っている想定でヒーターを備えた分電盤と、内部にヒーターを装着していない分電盤をそれぞれ5台(COOL分電盤のみ2台、その他の分電盤は各1台)ずつ、合計10台を並べて比べた。

実証実験(左)とサーモグラフィーの画像(右) 出典:竹中工務店プレスリリース

 その結果、内部にヒーターを備えない分電盤の場合、COOL分電盤と従来品を比較すると、最大約10度の温度上昇抑制効果があった。一方、内部にヒーターを設けた分電盤のケースでは、最大約8度の温度ダウン効果を確認した。加えて、遮熱塗料や遮光板といった一般的な熱対策を行った分電盤と比較したケースでも、COOL分電盤の方が温度上昇の抑制効果があることが分かった。

 今後、竹中工務店は、同社が手掛ける施設へのCOOL分電盤の導入拡大を目指すだけでなく、省エネや電力のピークカットなどを目的に、SPACECOOLを分電盤以外の用途に展開する。

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