シンクタンクの矢野経済研究所によると、今後もさらにZEBの注目度は高まっていくと予測しており、市場規模は2030年に7000億円を突破するとみている。ZEBの市場にいち早く参入すべく、パナソニック エレクトリックワークス社はZEBに関する専門知識を特化させた組織「ZEB推進チーム」を設立。建築主などの依頼に基づき、建物の設計から、施工、コンサルティングまでを一貫してサポートしている。
世界的に「脱カーボン」の潮流が高まる昨今、“SDGs”の言葉が国内でも広く浸透し、低炭素社会に向けた意識改革が起きている。経済産業省では、太陽光発電などによって生活で消費するエネルギーよりも生み出すエネルギーの方が上回る住宅を指す「ZEH」を推進している。特に最近ではZEHに加え、ビルの省エネ性能を向上させる動きも加速。オフィス空間や集合住宅として利用されるケースの多い高層の建物でも、一次エネルギーを収支ゼロとする建築物「ZEB」への関心が、建築物に関わる多様なステークホルダーの間で高まっている。
そうした社会情勢の変化を受け、ZEBに注力するパナソニック エレクトリックワークス社は2022年6月、ZEB化によって快適性と省エネを両立した特別養護老人ホーム「久辺の里」の現場見学会を開催し、設計に携わったZEBプランナーが施設の魅力を紹介した。併せて、同社の沖縄営業所開店50周年を記念したイベント「沖縄平和祈念公園ライトアップ」の見学も行われた。
ZEBとは、Net Zero Energy Buildingの略で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにする建物。再生エネルギーはZEHと同様に、太陽光パネルや外皮の高断熱材などによって賄(まかな)うだけでなく、さまざまな省エネ対象設備で補完する。対象設備は、空調、換気、照明、給湯、昇降機。OA機器など、設計図に反映されない設備はこれらの対象外となる。
ZEBは、ビルのエネルギー消費量によって4つに分類される。一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量を削減した建物は最も判断基準が低い「ZEB Ready」、75%以上は「Nearly ZEB」、正味で100%以上が『ZEB』。新設された「ZEB Oriented」は延べ床面積が1万平方メートル以上の建物が対象で一次エネルギー消費量を年間30〜40%以上の低減が条件となっている。
パナソニック エレクトリックワークス社 マーケティング本部 課長 小西豊樹氏は、「当社では、空調、換気、照明、給湯、太陽光発電などの多彩な省エネ製品を生み出してきた長年の実績があったため、市場に参入しやすい土壌は既にできていた」と説明。
同社では2019年10月頃から、新規事業を見据えた情報収集にまい進。さまざまなZEB実証事業を行う環境共創イニシアチブが公募している法人登録の資格「ZEBプランナー」を取得するなど、約2年間の準備期間を経て、満を持してZEBの一貫サービスを開始させた。
現在、ZEB推進チームでは7人の専門スタッフが常駐し、多方面でZEBに関する業務支援を行っている。環境共創イニシアチブで法人登録されているZEBプランナーは、大手ゼネコンや設計事務所、電気設備メーカーなど約300社に及ぶものの、同社ほど幅広く商材を扱っている企業はほとんどないとのこと。「空調機や照明器具といった製品をただ販売するだけではなく、照明の自動化、入退室の管理システムなど、付加価値を含めて提案できるのが強み。これからもZEBはもとより、空間の生産性向上と快適さを両立するプラスアルファのあるサービスを提供していきたい」と、小西氏は自信をのぞかせた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.