木質構造物の高層化という挑戦 Vol.2 大林組の11階建て研修施設「Port Plus」木の未来と可能性 ―素材・構法の発展と文化―(9)(1/2 ページ)

本連載では、一級建築士事務所 鍋野友哉アトリエ/TMYAを主宰する一級建築士の鍋野友哉氏が、近年環境に優しいなどの理由で関心を集める木材にスポットライトを当て、国内と世界における木造建築の歴史や最新の木造建築事例、木材を用いた構法などを紹介する。第9回目となる今回は、大林組が神奈川県横浜市で社員研修施設として開発を進め、2022年3月に竣工した高層純木造建築物「Port Plus」について採り上げる。

» 2022年07月13日 10時00分 公開

 神奈川県横浜市で、国内で木質構造物の高層化でマイルストーンとなる高層建築物が2022年3月に竣工しました。大林組が「OYプロジェクト」として、開発してきた高層純木造建築物「Port Plus」です。

5階以下のフロアでは「オメガウッド(耐火)」で2時間の耐火性能を実現

 第四回連載で、さまざまな国における高層建築物の事例として紹介した木質構造とRC造やS造とを組み合わせた複合構造とは異なり、Port Plusは、主要な構造部材が全て木質系材料で建設されています。

高層純木造建築物「Port Plus」 写真は全て筆者撮影

 Port Plusは、大林組の社員研修施設という位置付けで、宿泊機能を持つ建築物です。地下1階/地上11階建てで最高高さは44メートル、敷地面積は563.28平方メートル、延べ床面積は約3500平方メートルの規模となっています。

高層純木造建築物「Port Plus」の研修スペース
高層純木造建築物「Port Plus」の宿泊室内部。ベッドなど各所に木質径材料を使用

 建物が4階建てを超えるには、上から数えて5階以下の階に2時間の耐火性能が求められますが、Port Plusでは大林組が開発した耐火部材「オメガウッド(耐火)」を採用することで、必要となる耐火性能を満たしています。

 オメガウッドの断面構成は、中央に構造支持部材を配置し、その外側に石こうボードによる耐火層を設け、最外部に燃え代かつ仕上げとなる木材の表し層を設置した3層となっています。

オメガウッドの断面構成模型
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