IoTを活用して、建設現場の「ヒト」「資機材」「工事車両」の動きや状態をリアルタイムにデジタルツインで"見える化"する鹿島建設が開発した遠隔管理システム「3D K-Field」。建設現場をリアルタイムにデジタルツインで可視化するだけでなく、既に鹿島建設の赤坂本社や羽田イノベーションシティーで、スマートシティーのプラットフォームに採用され、街運営の多様なユーザビリティ向上に貢献している。
2021年10月、日立グループ最大規模のオンラインイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN」(2021年10月11〜15日)が開催された。フォーラムは、「MOBILITY」「LIFE」「INDUSTRY」「ENERGY」「DIGITAL INNOVATION」の5カテゴリーに分かれ、それぞれでユーザーの経営課題や社会課題の解決方法を探る多彩な取り組みを紹介した。
DIGITAL INNOVATIONのカテゴリーでのセッションには、鹿島建設 建築管理本部 建築技術部 技術企画グループ課長代理 天沼徹太郎氏が登壇。講演タイトルは「建設現場のデジタルシフト〜IoTデータの収集から活用に至るプロセスの構築〜」。2021年6月にオンラインで開かれた「日立ITユーザ会 第58回大会」で一般論文部門特賞を受賞した論文をベースにした内容だ。
天沼氏ははじめに、鹿島建設が2018年に策定した「鹿島スマート生産ビジョン」を紹介。建設業界の魅力を高めるとともに、未来の建設現場を想像して制作したビジョンで、鹿島建設は2024年までの実現を目指している。
ビジョン策定の背景には、「常態化する建設業界の作業員不足」(天沼氏)があるという。建設業界は現在、慢性的な労働者不足に直面しており、今後、状況はさらに深刻化することが予測される。さらに、他業種と比べて高齢化が顕著という課題も抱えている。
建設業界が今後、持続的に発展するためには、ICTを活用して建設業のあらゆる生産プロセスを刷新し、働き手の集まる業界に生まれ変わる必要がある。そうした思いをもとに描かれたのが「鹿島スマート生産ビジョン」だ。
天沼氏は、「鹿島スマート生産ビジョンは、3つのコア・コンセプトをもつ」と続ける。
1つ目は、「Work:作業の半分はロボットと」。高度な判断力や調整を要する作業は人が、資材運搬などの単純作業や危険な作業、連続作業などはロボットが担う。人とロボットが、それぞれの得意分野を生かして協働することで、建設現場の生産性向上につなげる考え方だ。
2つ目は、「MANAGEMENT:管理の半分は遠隔で」。人と人とのコミュニケーションはそのままに、現場での現物確認と遠隔管理を組み合わせて働き方を改革し、無駄のないスマートな建設現場を実現するという基本思想。
3つ目は、「ENGINEERING:全てのプロセスをデジタルに」。3Dの設計図であるBIMを基軸に、設計から施工、維持・管理までのプロセスをデジタル化し、生産性向上を図る。実績やノウハウも含めて、全プロセスをデジタル情報に変換し、蓄積・活用するというコンセプトだ。
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